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大病の苦しみを癒してくれた馬たちへ、「終の棲家」で恩返しを by Machikoさん


「withuma.」vol.51 Machikoさん


Profile

お名前:Machikoさん

居住地:横浜市

 

第51回は、数多くの引退馬支援活動をしながら、自身でも1頭の馬を引き取られているMachikoさんです!

いったいどのような「withuma.」を送っていらっしゃるのでしょうか?

 


Machikoさんの「withuma.」


写真:本人提供


「道東ホースタウンプロジェクト」と「NPO法人ホースタウンネットワーク」で活動をしています。


「道東ホースタウンプロジェクト」は、北海道の釧路標茶町と官民一体となり、ふるさと納税を使って、標茶町に乗馬クラブから少しでも安価に引退乗用馬を預託して頂く活動です。

また、豊かな自然を活かした外乗コースを開拓して、多くの外乗のお客様が来ていただけるように活動をしています。


「NPO法人ホースタウンネットワーク」は、全国の馬に関わる人や馬の為に取り組みを行う行政・団体等をつなぎ、引退乗用馬の預かり・活用を促進するための活動です。

現在、先述の「道東ホースタウンプロジェクト」をサポートしています。

活動内容を一言で表すと、「頑張った馬たちに終の棲家を!」です。


私は、引退馬協会の本部がある「イグレット乗馬俱楽部」に時々お邪魔していました。

その頃、イグレットのイベントでモンゴルツアーがあり、モンゴルに行ってみたかった私は沼田代表にお願いして、計3回参加させて頂き、その時に親しくなった方達と道東にも何度か外乗に行きました。

その時に宿泊したホテルの一つが素敵で、また行ってみたいと思っていました。


写真:本人提供


5年前、たまたま私の通っている乗馬クラブで道東ホースタウンプロジェクトの体験外乗ツアーのパンフレットを見つけ、宿泊先がそのホテルだったので友人と三人で参加しました。

標茶町の豊かな自然の風景とプロジェクトの趣旨に賛同してサポーターになり、標茶町から正式にサポーターを任命されました。


プロジェクトの預託馬をお願いしている釧路セントラル牧場は、標茶町の南方にあり、冬の気温は下がりますが降雪量は比較的少ない所です。

当初の予定では、より安価に預託できる共同放牧馬を増やして行きたかった様ですが、やはり冬の寒さを心配されて厩舎飼いの預託馬が多く、厩舎が満杯で近隣の牧場に厩舎を増やしています。

今後たくさんの引退乗用馬を受け入れできるよう、安心できる共同放牧のより良い環境作りと飼養技術の向上の努力が必要だと思います。


写真:本人提供


現在の標茶町は牛が多く、牧草地も沢山ありますが、元々は軍馬養成の地でした。

乗馬クラブから引退乗用馬が預託され、会員さんに会いに来て頂き、標茶の良いところを見てくだされば預託馬も増えていくと思います。

外乗や観光を楽しんで頂き、リピートする方が増えれば道東の活性化にもつながりますので、出来るだけ多くの方に会いに来て頂きたいと思います。

やはり一番の目標は引退乗用馬を預託して頂ける乗馬クラブが増えてくれる事です。

 

実はMachikoさんとは、2018年に行われた引退馬協会のホーストラスト鹿児島でのボランティアツアーでご一緒させていただきました。

当時まだ高校2年生の私に、引退馬の事を色々と教えていただき、ホーストレッキングも一緒に楽しませていただきました。

現在は道東方面での活動に注力しておられるのですね。


「道東ホースタウンプロジェクト」は、ふるさと納税を活用した引退乗用馬の養老施設として、その広大な土地を活かした事業活動を行っておられると認識しております。

Loveumagazine.『「責任と義務」JRA調教師・鈴木伸尋 2/3』では、(道東ホースタウンプロジェクトは)マンパワーの部分に課題があり、JRA内に設置された「引退競走馬に関する検討委員会」でもバックアップしているとお話をされていました。


官民一体のプロジェクト。

観光需要も回復しつつありますから、どんどん盛り上がってほしいと感じました。

 

Machikoさんの「Loveuma.」


私は7年前、延髄直下に頚髄内腫瘍が見つかり、除去手術により首から下の触感をかなり失いました。

見た目は健常者でも体中痺れて、まるで感電している様で、時々体に稲妻のようなものが走ります。

機能障害が指先などに出ていますが、何とか日常の生活をこなしています。

今まで経験した事のない体感の苦しさに、一時は欝とパニック症状が出ましたが、幸い薬が効いて二ヶ月程で精神面は落ち着きました。

体がふらつくので外出は控えていましたが、だんだん馬に会いたくなり、思い切って乗馬クラブに行きました。

体の麻痺が右側は比較的軽く、車の運転ができたのは幸いでした。


写真:本人提供


久しぶりの馬の香りが懐かしくて涙が出そうでした。

レッスンを終えて馬房に帰って来た馬の首に思わず抱き着いてしまい、その馬は私が普段乗らない馬でしたが私が弱っているのを察してくれたのか、暫くじっとしていてくれました。

馬の体温が私に伝わり、凍てついた心が融けていきました。

やはり馬には人の心を癒す何かがあります。


写真:本人提供


普段お世話になっていたインストラクターから、引き馬をしてあげるから乗ってみたらと言って頂き、15分程の引き馬から私の乗馬が再開しました。

一人で少しずつ並足や速足をしている内に駈足もできるようになり、部班レッスンに参加できるようになりましたが、指の感触や力が弱く手綱が緩みます。

鐙も足裏が殆ど感じないので外れやすく、インストラクターが、落馬しても外れるようにゴムチューブで固定して下さいましたが、直ぐに慣れてゴムチューブも必要無くなりました。


写真:本人提供


ふらつきながら乗馬クラブに来ても、帰りは真っ直ぐ歩けます。

バランスの悪い筋肉が鍛えられるようです。

馬に触れたり、乗馬仲間と話したりするだけでも気持ちが明るくなり、私には何よりのリハビリです。

乗馬をやっていて本当に良かった、その分できるだけ馬に恩返しをしたいと思います。


私の好きな馬はステイゴールドと、彼のユニークな息子達のオルフェーヴルとゴールドシップです。


写真:本人提供


ステイゴールドとは、亡くなる前年の秋に引退馬協会のツアーで会ったのが最後となってしまいました。

その時は鼻先がカサついていて、あまり健康に見えませんでした。

彼は小柄でも猛獣の様な馬で有名でしたが、私たちが近づいても威嚇することは無く、沼田代表と当時関東支部担当だった曽根さんを両側に、コントの様な楽しい動画が残っています。

撮っていた私の笑い声が余りにも煩いので、編集した動画が引退馬協会のオフィシャルサイトで見ることができましたが、今はわかりません。

私達が帰る時、彼だけ馬房から顔をずっと出してバスを見送っていました。

もしかしたら人が好きだったのかもしれません。

翌年の種付け初日に大動脈破裂で急死した時には、ずっとバスを見送っていた彼の姿を思い出し涙が出ました。


写真:本人提供


オルフェーヴルは競走能力の高さはもちろんですが、あの自由奔放な所が好きです。

ゴールドシップも高い競走能力を持ちながらも乗り難しさがあるそうで、ここ一番でとんでもない失敗をする所が逆にファンを惹き付けます。


引退直後の二頭には偶然会うことが出来ました。

オルフェーブルは、パドック付きの厩舎でのんびり。

ゴールドシップは寒い時期でしたが、お湯で洗っている最中でした。


写真:本人提供


そして、メイショウドトウとタイキシャトルは特別な存在です。

引退馬協会で、ナイスネイチャが高齢なので後を引き継ぐ馬の話が出た時に、私が思わずメイショウドトウの名を出しました。

ブロンズコレクターのナイスネイチャに、シルバーコレクターのメイショウドトウが加われば面白いと思ったのですが、メイショウさんはドトウをとても可愛がられていて、生涯面倒を見るおつもりだったようで、引退馬協会のお役に立つならと手放してくださったそうです。


写真:本人提供


メイショウドトウは先の心配もなく、反対される方もいらしたようですが、引退馬協会のメイショウドトウの扱いに信頼を寄せられたイーストスタッドさんから、タイキシャトルの引退後の余生を依頼されたことで、ゴールドコレクターのタイキシャトルも引退馬協会のフォスターホースになりました。

残念なことにタイキシャトルは昨年、天寿全うして亡くなってしまいましたが、間際まで元気でいて、眠っている間に苦しんだ様子もなく旅立ったそうです。

私は納骨式の時にタイキシャトルの遺骨を抱かせて頂きました。

納骨式の後で、ノーザンレイクさんのご厚意で牧場見学をさせて頂き、ヤンチャなメイショウドトウと遊んだり有名猫のメトちゃんにも会えて幸せなひと時でした。


写真:本人提供


彼らを一言で表すと、「リスペクト」でしょうか。

 

お身体の調子を伺っていると、馬に乗ることは厳しいように思いましたが、駆足や部班レッスンへ合流出来るまでになられたとのこと、とても驚きました。


Withuma.に登場いただいた方でも、多くの方が"馬のヒーリング効果"についてご経験を語っていただいておりますが、馬の癒しの力は本当に偉大だと感じます。

人の気持ちを理解してくれるところも、馬の持つ大きな魅力の一つですよね。


メイショウドトウが引退馬協会の所有馬になった経緯には、そのような背景があったのですね。

これからも健康に余生を送ってもらいたいです。

昨年ノーザンレイクさんを訪問した際、タイキシャトルが亡くなった数日後であり、最期に会えなかったことをとても寂しく感じたと共に、「会える内に、会いたい馬に会う」ことの大切さを痛感しました。


そんな養老牧場・ノーザンレイクさんの日々を綴った『ノーザンレイクダイアリー』もLoveuma.で連載中です。

看板猫のメトちゃんも度々登場していますので、是非ご覧ください。

 

引退馬問題について


写真:本人提供


引退馬協会に4頭と被災馬たち、ホーストラストに2頭、ビッグゴールドの会、サカモトホースファミリー、渡辺牧場里親会、ツルマルツヨシの会をサポートしています。

また、縁あって引退馬を1頭引き取りました。



写真:本人提供


多人数で1頭の馬をサポートするのは楽しく、あまり責任を感じる事はありませんでしたが、いざ自分で1頭を引き取ると、その責任の重さを改めて感じます。

預託料を払い続ける事が一番重要なことなので、もし自分が出来なくなった時には息子に後を頼んであります。


写真:本人提供


引退馬が生き続けるには、やはり馬の需要が広がる必要があると思います。

特に引退乗用馬には狭き門です。

沢山の人が色々な方向を模索している所と思います。


鶏糞や豚糞には、餌にタンパク質や炭水化物が多いので肥料効果は高いのですが、牛糞や馬糞には植物性有機物が沢山含まれているので、土壌微生物が活性化されて土壌回復効果が高いそうです。

化学肥料を使い続けると土壌が固くなるので、一番効果の高い馬糞肥料をもっと使ってくれると良いですね。

馬糞でしたら高齢馬も貢献できますし。

馬のいる風景が沢山増えて、馬がもっと人々の身近な存在になる事を願っています。



写真:本人提供

 

とても幅広く引退馬支援をされているのですね。

そしてご自身でも一頭の引退馬を引き取って預託されているとのこと。

1人で一頭の馬を養うということは、その馬の命綱を自分が握っているということですから、大勢で支える引退馬支援とは違い、おっしゃる通り責任が伴うものだと思います。

ご子息様にも後を頼んでおられるとのことで、万が一のことがあっても安心できますね。


そして馬糞堆肥についても触れていただきました。

Loveumagazine.『馬は人を乗せずに、月8万円稼げるか?|名伯楽・角居勝彦の挑戦 2/4』では、馬糞堆肥を活用した有機肥料の開発にまつわるお話を、元調教師の角居勝彦さんが語っておられました。

他にも、弊社が制作した映画『今日もどこかで馬は生まれる』に登場した「ジオファーム・八幡平」の船橋さんや、最近ではTCC Japanさんも馬糞堆肥を活用したカフェをオープンするなど、馬に関わる事業主の方々がたくさん取組みをされている分野ですよね。


角居さんが記事の中で、馬に何ができるのかという質問に対して「馬は草食ってうんこするくらい」と冗談交じりに仰っていたように、草を食べてのんびりと余生を送るだけでも経済活動に貢献できるという部分は、Machikoさんが仰る「高齢馬でも貢献できる」大きなメリットだと思いました。

 

 

今回は、数多くの引退馬支援活動をしながら、自身でも1頭の馬を引き取られているMachikoさんの「withuma.」を伺いました!

毎週定期更新してまいりますので、次回もよろしくお願いいたします!


 

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協力:Machikoさん 取材・文:片川 晴喜 編集:平林 健一 著作:Creem Pan

 


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