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あなたは何をもって、引退馬問題が"解決した"と考えますか?|アンケート調査 vol.1 大解剖 2/2






 

Loveuma.は取材と並行して引退馬問題についてのアンケート調査を行い、世論を可視化することで引退馬問題全体の前進を目指しています。

2022年10月から1カ月半、本サイトを訪問した人々を対象に「引退馬問題とは一体どういうものなのか」を尋ねるアンケートを実施しました。


 

アンケート調査vol.1「引退馬問題は解決すべき?」より作成


前回の記事では、多くの人々が引退馬をとりまく現実に対して問題意識を持つ一方、「何を問題とするか」については意見が分かれることが明らかになりました。

今回は、引退馬をめぐる問題について「どのような解決策が考えられるか」「支援をしているか」について、集まった意見を紐解いていきます。



「引退馬問題は解決するか」大きく意見分かれる


引退馬の現実について問題だと思う・どちらとも言えないと答えた人々に対して「問題は解決するか」を尋ねたところ、大きく回答が分かれました。


アンケート調査vol.1「引退馬問題は解決すべき?」より作成


全体の7割近くを「どちらでもない」「いいえ」が占めました。

その理由について、主に次のような意見があがっています。


アンケート調査vol.1「引退馬問題は解決すべき?」より作成


前回紹介した「引退馬問題」が複雑であるからこそ、解決の道筋が見えづらい状況が浮き彫りになりました。「線引きが難しい」「問題・解決の定義がわからない」という意見の示す通り、何をもって解決とするか、問題をどこに定めるかによって大きく変わる状況があります。

一方、17%の「解決する」と考える理由は主に次の通りです。


アンケート調査vol.1「引退馬問題は解決すべき?」より作成


また、「解決する」という回答の中には、具体的な解決策・支援策の提案、生産頭数を制限すべきという記述が多く見られました。



「生産数制限」「競馬廃止」で解決するか


Loveuma.ではこれまでさまざまな人との対話を重ねる中で、「競走馬の生産数を制限」「競馬廃止」によって問題は解決するという声を聞く機会がありました。今回のアンケートでは、この2点についても回答を募りました。


アンケート調査vol.1「引退馬問題は解決すべき?」より作成


生産頭数の制限については大きく意見が分かれました。

生産頭数を制限すべきという考えには「生産制限をすれば天寿を全うできる・活躍できる馬が増える」「人手不足が解消する」「出産する繁殖牝馬への負担を減らせる」というものもある一方、生産現場への影響や、業界縮小への懸念も聞かれました。


アンケート調査vol.1「引退馬問題は解決すべき?」より作成


一方、「競馬を廃止すれば解決するか」という設問では、9割以上が「いいえ」「どちらともいえない」と答えています。肯定できない意見には、行き場を失う競走馬が溢れることや、産業の衰退への危惧があるようです。



「できる範囲で」7割が何らかの支援


現在、引退馬の現実に対し問題意識を抱く団体や個人により、引退馬の飼養や新たな活躍の場作りなど、さまざまな引退馬支援活動が行われています。

これらの支援に取り組んでいるかについても詳しく聞きました。


アンケート調査vol.1「引退馬問題は解決すべき?」より作成


もともと関心のある人々の回答が多いこともあってか、7割近くが支援をしていることがわかりました。自由記述には「継続しては難しいが、単発で寄付をしている」という声も目立ち、無理のない範囲で自分のできる支援に取り組んでいるとみられます。


一方、支援をしていない理由としては「支援の方法がわからない」という声が多く見られました。Loveuma.としては、意欲がありながらも情報不足による機会損失が生じるのは「もったいない」と感じています。わかりやすく丁寧に支援方法を説明していくべきだと再確認しました。支援がどのように役に立つのか、解決への助けとなるのかを伝えるのも重要です。


「支援先が適切な体制で運用されているか」「適切な飼養を行っているか」と、支援先が信頼できるかどうか心配する声も聞かれました。支援方法や支援先の情報のみならず、信頼できる団体か、適切な経営・運用がなされているか、支援者が支援先を適切に見極め、判断できる材料が求められていると痛感します。



さまざまな声「支援を続けたい」「情報を発信してほしい」


アンケートの最後の自由記述欄には、設問の幅を超えた多くの思いが語られました。


問題や解決策での回答と同様、より詳しい情報を求める声、国・主催者・馬主に対し、積極的に引退馬問題に関わってほしいという意見が強く語られました。情報が不足しているからこそ、Loveuma.をはじめとするメディアの役割を期待するという声も聞かれました。


そして回答の3分の1近くを「できることをしていきたい」「今後(も)支援したい」という意気込みや目標が占めていたことも印象的です。このアンケートが、私たちの目指す「引退馬問題の前進」に繋がっているのではないかと前向きに受け止めています。



さまざまな意見をもとに考え、行動するきっかけに


ここまで363件に及ぶ熱意あふれるアンケート結果を集計、考察してきました。真摯な声をお寄せいただいた皆様に感謝いたします。


まだまだ聴取すべき声が多くあるとは思いますが、ひとまず今回の調査を通じて引退馬の現状に寄せられる意見がさまざまで、問題が複雑に入り組んでいることが明らかになったと思います。そして問題意識の数だけ、解決策もさまざまであることもわかりました。

人々の声の洗い出しができたのは、これからの引退馬の現実についてより深く考えていく上で大きな価値のあることだと感じています。


私たちは、今回紹介したひとつひとつの意見について「正しい」「間違っている」と決めるべきではないと考えています。さまざまな声をもとに、一人ひとりが自分と異なる考えと比べて、自分自身の「現在地」を知り、行動につなげることに意義があります。


Loveuma.はこの調査結果を活かしながら引退馬の「現在地」を伝え、引退馬問題の前進を目指していきます。これからも皆様の声をお聞かせください。


 

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参考:アンケートの設問


【回答者の属性について探る設問】

1. 年齢をご記入ください。

2. 引退馬問題に関心がありますか?

3. 馬との関わり方について選んでください。


【問題意識について探る設問】

4. 引退馬の現実は問題だと思いますか?

5. Q4.で「いいえ」と答えた人に質問です。その理由をお答えください。

6. Q4. で「はい」「どちらとも言えない」と答えた人に質問です問題だと感じる理由の一つとして、競走馬が天寿を全うできないケースがあることが挙げられますか?

7. Q4. で「はい」「どちらとも言えない」と答えた人に質問です。問題だと感じる理由の一つとして、競走馬として生まれたにも関わらず、食肉(動物の餌を含む)になるケースがあることが挙げられますか?

8. Q4. で「はい」「どちらとも言えない」と答えた人に質問です。問題だと感じる理由の一つとして、競走馬が引退後、行方が分からなくなるケースがあることが挙げられますか?

9. Q4. で「はい」「どちらとも言えない」と答えた人に質問です。問題だと感じる理由の一つとして、競走引退後の活躍の場が少ないことが挙げられますか?

10. Q4. で「はい」「どちらとも言えない」と答えた人に質問です。その他で問題だと感じる理由がありましたらお答えください。


【解決について探る設問】

11. Q4. で「はい」「どちらとも言えない」と答えた人に質問です。引退馬問題解決のためには競走馬の生産頭数を制限するべきだと考えますか?

12. Q4. で「はい」「どちらとも言えない」と答えた人に質問です。引退馬問題解決のためには競馬はなくなるべきだと考えますか?

13. Q4. で「はい」「どちらとも言えない」と答えた人に質問です。引退馬の問題は解決すると思いますか?その理由も併せてお書きください。


【現在行っている支援について探る設問】

14. 現在行っている引退馬支援はありますか?

15. Q14.で「ある」と答えた方に質問です。その内容をお書きください。

16. Q14.で「ない」と答えた方に質問です。支援しないまたはできない理由は何ですか?


【その他の設問】

17. ご意見がありましたらご記入ください

18. メールアドレス

19. 性別


 


文:手塚 一十三

デザイン:椎葉 権成

制作:片川 晴喜

協力:緒方 きしん

監修:平林 健一

著作:Creem Pan


 


監修者プロフィール:平林健一
(Loveuma.運営責任者 / 株式会社Creem Pan 代表取締役)

1987年、青森県生まれ、千葉県育ち、渋谷区在住。幼少期から大の競馬好きとして育った。自主制作映像がきっかけで映像の道に進み、多摩美術大学に進学。卒業後は株式会社 Enjin に映像ディレクターとして就職し、テレビ番組などを多く手掛ける。2017年に社内サークルとしてCreem Panを発足。その活動の一環として、映画「今日もどこかで馬は生まれる」 を企画・監督し、2020年に同作が門真国際映画祭2020で優秀賞と大阪府知事賞を受賞した。2021年に Creem Pan を法人化し、Loveuma. の開発・運営をスタートする。JRA-VANやnetkeiba、テレビ東京の競馬特別番組、馬主協会のPR広告など、 多様な競馬関連のコンテンツ制作を生業にしつつメディア制作を通じた引退馬支援をライフワークにしている。


 

 

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3 Comments


HisMajesty Graustark
HisMajesty Graustark
Feb 02, 2023

昨日、タイセイビジョン号の心不全による急死が報じられました。(どうか安らかに🙏🏻)

「死んだ」という言葉づかいに反応したファンの様々な声に、競走馬に対する意識差を聞き取ることができたように思います。

以下、netkeibaのコメント欄より抜粋して引用。ハンドルネームは伏せます。:


A:毎回思うけど「死んだ」って表現なんなの? 大手サイトならもっと気遣い大事にしなさいよ。


B: >毎回思うけど「死んだ」って表現なんなの?大手サイトならもっと気遣い大事にしなさいよ。

  こういう、表現についてきちんと調べようとしないで 感情だけでモノ言う人間の事を「お気持ちヤクザ」と呼びます。 皆さん勉強になりましたね。 これにいいねつけた人も反省しましょうね。


C:死亡とか亡くなるは人にしか使えないからどうしてもこうなってしまう。 ただ、日本語も日々変化してるからそろそろ何か新しい言い方が出てきてほしいところではあるかな。 まだ活躍出来ると思っていただけに残念です。


D:ここで記事の日本語についてお気持ち表明してるコメントの方が余程競走馬に敬意を持ってないでしょ


E:死んだって表現はルール上の問題だから記者は悪くないが、ルールそのものは変えていかないと もう動物を物として扱う時代じゃないからね


F:死去した、息を引き取った等々いくらでも言いようがあると思うけどな。 死んだという表現にもちろん悪意はないんだろうけど敬意を欠いているようには感じてしまうな。


G:肉の塊になったが正解。


H:先日、「永眠」という言葉を使っていた記事を読みました。 死ぬというよりは受け入れやすい、いい配慮だなと思いました。


ちなみに、2月2日22時頃の時点で「いいね!」が最多(208)だったコメントはAさん、最少(1)はGさん。Aさんを批判したBさんはその中間(80)でした。

時間の経過と共に推移するであろう数字ですから、必ずしも有意な指標とは言えませんが、年代別のファンの意識の大まかな傾向は見えていると思います。


たとえばBさんは、コメント履歴の分析から、この中で最も高年齢層のコメンテーターであることが推認できます。

感傷を嫌う「おとな」のリアリストとしての自負があり、ここで日本語の「表現」にこだわったりするのは、自負心を補強する手段の一つです。古参の競馬マニアらしく、後進の「間違い」を正すことに熱心な一方で、言葉は生き物でありルールは変化するという普遍の真理に気がつく余裕はないようです。


Aさんは、まさにJRAが「有望なファン」としてターゲットにしている年代(20代~40代)のド真ん中に位置するグループの一員ではないかと想像します。

競走馬にも、人で言えば「人格」に当たる(「擬人格」とも呼びたい)生き物の「格」があることを認めていて、言語表現上もそれに見合う敬意を払いたい、払ってほしい、と望んでいる。

だから、「死んだ」などの味も素っ気もない単純な表現が不適切に感じられてしまうのです。


従来の定説に固執しないオープンマインドな柔軟さがうかがえるのはEさん。

相手(ここでは記者)の立場に配慮しつつも、言葉とは時代によって意味や用法が変わるものだという成熟した認識を持つ中堅層です。

「ルールそのものは変えていかないと」。個人的には、このスタンスに共感します。(なので、馬の死に際して「死亡」「死去」「逝く」等の人間向けの語を準用しても差し支えないと思っています)


最も即物的な言い方をしたのはGさん。ドイツ語でいうSachlichkeit(ザッハリヒカイト)の極右に位置する表現です。むき出しの率直さにティーンエイジャーのような若さを感じますが、実年齢か精神年齢かは定かでない。

仮に私がこのような方の死亡記事を担当するとしたら、故人の生前の超即物主義を尊重して「◯月◯日、G氏は惜しまれつつ肉の塊になりました。ご冥福をお祈りいたします」と書くのがGさんの言う「正解」であり供養なのかもしれません。


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HisMajesty Graustark
HisMajesty Graustark
Jan 30, 2023

引退競走馬支援基金が設立されたと仮定して....


使途は以下のようなものが考えられますね。

  *引退馬の繋養地の確保と整備

  *繋養施設(個人牧場含む)への手厚い助成

  *引退馬飼養管理者の育成(外国人の場合は語学研修含む)

  *引退馬の慰労(休養・治療・リハビリ)期間中の飼養管理費

  *引退馬のセカンド/サードキャリア支援

  *バイオマス発電プラントの建設(原料は馬糞と敷料)

  *バイオマス発電で電力供給するコミュニティ(町・村・施設)の創設、運営

  *馬糞堆肥工場の建設

  *馬糞堆肥を使う農園の設立

  *ターミナル牧場の創設:引退後の法定慰労期間(競馬法で定めてほしい)中に次の行き先が決まらず、やむを得ず廃用となる馬の放牧肥育を行う牧草地付きの施設。(肥育中でも引き取り手や行き先が決まればいつでも譲渡可とする)


....などなど。

某競走馬名じゃないけれど、あくまでもユメハハテシナク。🙂💕


基金が他の用途に回されないよう監視することも必要。

たとえばJRAに対して、(1)競馬のネット参加料の◯%を引退競走馬支援基金に充当するという規定を作り、(2)収支を公開して透明性を確保する、という2点を守ってもらうよう求めなければいけませんね。


(基金を管理・運営する独立した財団法人か何かを立ち上げ、鈴木調教師や角居元調教師に相談役になっていただくのが理想です。🐴🙏🏻)


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HisMajesty Graustark
HisMajesty Graustark
Jan 30, 2023

さてさて。引退馬支援の財源について、ちょっと私見を述べさせていただきます。💴 👀

 

競馬の廃止を求める声もありますが、私は逆の発想もありではないかと考えています。🤔

すなわち「生産頭数は現状(6000~7000頭ほど)に据え置き、競馬人口をもっと増やすこと」。これが少なくとも、引退馬支援のための財源確保につながるのではないかと。

 

なぜなら、日本には他の競馬先進国にない強みがあるからです。

周知のとおり、日本の競馬は一部の富裕層やコアなギャンブラーや年に数回しか馬券を買わない気まぐれファンだけの娯楽ではなく、正真正銘の「大衆競馬」。

つまり、多くの一般人が、少額のベッティング(賭け)ではあっても、毎週せっせと馬券を買うことで事業が成り立っているのです。


JRAは1954年以降の競馬の「売得金」及び「開催場入場人員」、1984年以降の「総参加人員」を、年度別に表やグラフにして公表しています。

直近の2022年度の集計によれば、JRA主催の競馬の「総参加人員」は約1億9600万人(前年比110.5%)、「売得金」は約3兆2500億円(前年比105.3%)。

参加人員の中で注目したいのは、ネット投票者の増加。

2022年現在、JRAのネット会員数は500万人を超えており、新型コロナ禍で場外馬券売り場が休止した2020年などは、ネットでの発売額が2兆7753億円(前年より36%増)にも達しました。


競馬場の入場料は100円~200円ですね。

仮に、500万人のJRAネット会員が入場料に代えて「参加料」もしくは「観戦料」として一人一日100円支払うことにすれば、たった1日の競馬で最高5億円が集まる。そこから経費を40%差し引くとしても、3億円は残る。

これを元手に「引退競走馬支援基金」✨を設立すればいいのでは?と思っています。


重要なのは、これから継続的に競馬を楽しもうかという年代の人たちには、本記事前半のアンケート結果が示すように、「現役競走馬のファンであると同時に馬の引退後も気にかける」というマインドセットがすでに出来あがりつつあるということ。

このような意識がさらに広く競馬ファンの間に拡散・共有されれば、彼らは自分たちが増やした売り上げ(参加料)で「引退競走馬支援基金」が誕生することに異存はないと思うのですが、いかがでしょうか?


 Loveuma.のミッションの一つは、「声」を集めることではないかと思います。

 小さな呟きが集まって大合唱になる日が待ち遠しい。ファンの声が届く競馬組織であってほしいですね。☺️


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