ノーリーズンとの思い出📔✒️「会える馬には今のうちに会っておけ」を強く実感した件について🐴
- Loveuma.
- 3 日前
- 読了時間: 6分
更新日:1 日前

馬のような謎の四足歩行生物「UMA」の産みの親である
イラストレーター・鷹月ナトが、
日頃の制作活動の舞台裏や、馬への愛を書き連ねる連載です。
今年の皐月賞が終わり、現時点での世代格付けがされた。 今回は出資馬が出るということもあり、現地で観戦していた。スタートが決まらず7着に終わったが、今後が楽しみなくらいの素質は十分見せてくれた。 クラシックG1に出れるというだけでも凄いのだが、更にそこで勝つというのはやはり持つものがあると言えよう。 彼もそんな1頭だったに違いない。
2日目、朝から仙台の宿から車で福島へ南下する。
南相馬までは1時間以上かかる。ノーリーズンについてやその日はノーリーズン以外の功労馬も見学予定だったので、その馬についても改めて復習する。
ノーリーズンは2002年の皐月賞馬。6月生まれでありながら、短期免許で来ていたイギリスの騎手を背にクラシック最初の栄冠を手に入れた。しかもあの3冠馬ナリタブライアンのレコードを更新して。
その後は骨折したり、中々歯車が噛み合わずとであったが種牡馬引退後は南相馬の地に降り立った。
現在繋養されている鹿頭ステーブルにお邪魔する。敷地内に入ると何やら既に1人オーナーさん達と話している様子だった。 先に来た見学者だろうか?関東の人間なら、我々と同じような行動力のある関東のファンかもしれないと車内で勝手に3人で想像しつつ車を降りて、オーナーの方とご挨拶する。 ノーリーズンは下にいるよということで階段の下に降りるように促される。階段を降りていくとオーナーの言葉通り、彼がいた。

まだ3月頭の南相馬は風が冷たく、中々に寒い。そのおかげか冬毛で大変もっこもこになっていた。厚目の馬着からはみ出るお顔が体毛の色も相まってまるで熊のよう。
ゴロゴロした後なのか、顔半分が泥がついている。中々派手にやっております。

海からくる風を受けつつも日向が気持ちいいのか、見ている間はずっとうとうとしている感じだった。
他のパドックに出されている馬たちも気持ちよさそうに日向ぼっこしたり、座ったりとなごやかな放牧風景がそこにはあった。
見学させていただき満足した後、階段を上がりオーナーさんにここに来てからのノーリーズンの話を伺う。
彼が福島の南相馬に来てすぐに東北大震災が起きた。南相馬も大きい被害を受け、最初に繋養されていた場所が被災。また福島第一原発の事故の影響もあり、彼は一時的に福島を離れ避難していたそうだ。その後鹿頭ステーブルへやってきて、10年近く今のオーナーとその仲間達と一緒に暮らしていた。
最初はまだまだやんちゃなとこがあったそうだがもう25歳、年を取るにつれ大人しくなっていったという。
他に繋養されている馬たちと共に南相馬の伝統行事である、相馬野馬追にも参加していた。 実際野馬追の時にはスイッチが入るらしく、見学時は冬毛なのもあり、もこもこのゆったりとしたおじいちゃんのようだったが、本番では競走馬の時のような本気の気配を漂わせるとのこと。 過去のSNSや記事に上がっている出陣したノーリーズンを調べて確認してみると、今見た状態よりもキッと目に闘志が宿ったような、明らかに雰囲気が変わった雄姿が写真で上がっていた。 さすが皐月賞馬というべきか。

そんな野馬追も近年引退したとSNSでは噂が流れていたが、オーナー曰くそんなことは全くないということ。過去には神旗争奪戦にも出ていたが年齢的にも厳しいので、そちらはもう参加はしていないが、お行列には参加しているとのことだった。
今年も参加するつもりだから、もっとかっこよくなったノーリーズンを見にきてよ、とオーナーに言っていただけた。これは俄然見たくなってくる。
相馬野馬追を見に行きたいという気持ちは更に昂った。
話が落ち着いてからもう一度階段を降りてノーリーズンおかわりを決めようとしたら、
寝てる!!!!!!!!!!!!!!

お客さんが目の前からいなくなって完全にオフモードになっていたようである。ムニャムニャと眠そうなおじいちゃんをこちらは慌てながら改めて写真に収める。
ぶっちゃけ今の情報だけだと可愛いおじいちゃん馬という印象が強い。これが本番に近づくにつれすっきりと勇ましい騎馬と変身していくというのだから、ギャップって素晴らしいと感じる。
ちなみにこれはほんとに偶然ではあるが、私たちより先に来ていた方、実は相馬野馬追執行委員会【公式】Xアカウントの中の人であった。知ってるアカウントのアイコンイラストのシールを渡され、驚愕する我々。 同じく噂のノーリーズンを見に来ていた模様。 まさかの出会いと共にそこで親しくなり、お仕事をいただくことになるのはまたいつかのお話し。
オーナーに見学のお礼を伝え、鹿頭ステーブルを後にする。 その後は同じく野馬追に参加している重賞馬達の見学をし、最後に相馬野馬追にて甲冑競馬や神旗争奪戦等が行われる、雲雀ヶ原祭場地を見にいく。

枯れ草が漂う芝の中にダートコースがしっかり存在している。普段は地元の散歩コースになっているようで、我々が伺った時も散歩している方がいた。
これが5月になれば青々とした豊かな芝となり、そこに現代に蘇りし騎馬武者たちがひしめくのだ。想像するだけでもなんて面白そうなんだと沸々と感じていく。
5月の相馬野馬追に対して色々と楽しみを貰えた取材旅だった。
だが、野馬追の準備がされているだろう5月7日に彼は息を引き取った。25歳だった。
突然の訃報に衝撃を隠せなかった。この知らせを見たファンは今年の野馬追で見てみたかったという声も多かった記憶がある。
2023年以前の催事時期から2024年は5月に時期をずらしたこと。公式のXの宣伝効果や某ゲームの影響もあり特に注目が集まっていた。私自身も、オーナーが仰っていたようなかっこいいノーリーズンが見れないのは非常に残念な気持ちでもあった。
だがそれと同時に、あの時に見学に行ってなければ、会うことはなかったままかもしれないというをまざまざと思い知る瞬間でもあった。 関係者やオーナー曰く「自分の役目が分かってたんじゃないか」と言う。 なにか、役目を終えて彼の中で満足していたのかもしれない。

会える馬には会えるうちに会っておけ。という言葉は競馬ファンの中ではよく聞く言葉だと思うが、私はここで初めて強く実感をした。 勢い(行動力)は大事、これはノーリーズンが改めて教えてくれたに違いないだろう。
文:鷹月 ナト
編集:椎葉 権成・近藤 将太
著作:Creem Pan
Comments