とある春の日、コジュウチョウサンたちに会ってきた🐴👨🏻🦲🪷
- Loveuma.
- 4月23日
- 読了時間: 3分

かつて育成牧場の場長を務め、現在は曹洞宗妙安寺の僧侶。
「ウマのお坊さん」こと国分二朗が、徒然なるままに馬にまつわる日々を綴ります。
ずっと会いたかった馬と人
雪が降ったり、初夏の陽気になったり、変わり易いというにはいささか乱暴すぎる春の日、会いたい馬と人に会ってきた。
もともと予定を立てていたわけではない。
午前中の予定が突如無くなった。
そして午後には千葉の佐倉へ行く用事がある。
ずっと会いに行きたかった馬と人は隣町の富里にいる。
これはもう「会いに行きなさい」と導かれているような気がした。
いや、会いに行かなければ。そう、会わなければいけないのだ。
オタク気質をいかんなく発揮して、一人勝手に盛り上がり「会いに行きます」とメールを送ったのは、なんと前日の晩。
僧侶としてはもちろん、常識人としていささか礼を逸しているのではないかとドキドキしながら返事を待ったが、果たして返信は「ベリーウエルカム」的な内容であった。
(*一般の方の見学は受け付けていません。ご理解のほどよろしくお願いいたします。)
翌日は季節外れの初夏の陽気。
申し分ない天気であったが、もうとにかく花粉が凄い。
見えてはいないが幾百幾千もの粒子が、鼻腔の粘膜と眼球に侵食してくる。
会う前から、感涙むせび泣くにも程があるだろう状態だった。
目的地へ到着。
ちょっと汗ばむくらいの暖かい日差しのもと、放牧地で2頭のポニーがのんびりと草を食んでいる。
二人の男性が放牧地脇のベンチでのんびりしているのが見えた。
一人は今回会いに来た我妻さん。
老舗呉服屋、銀座いわきやの五代目だ。
着物と馬を結ぶ呉服屋として鋭意展開している。
西陣織で精密に織り込まれた名画のような競走馬、といえばご存じの方も多いであろう。
そしてもう一人は、つい先日お会いしたばかりの大井競馬の調教師、須田先生であった。
かなり驚いた。
「なんでいるんですか?」
とっさのシチュエーションにおいて「適切な言葉を選ぶ能力」に著しく欠ける自分を、時折呪い殺したくなる。
それでも須田先生は優しかった。
旧知の知り合いだという。
我妻さんが幼少の頃からよく知っているよ、とのお話だった。
そして二人のの関係を説明してくれる話のなかで、まあ知っている名前が出てくる出てくる。
いちいち驚くのも面倒になるくらい、知人というにはいささか雲上人過ぎるが、関わりのあった人の名前が出てきた。
どの業界でもいう話ではあるが、つくづく馬の世界は狭い。
目の前の馬に集中していた頃はたいして感じていなかったが、馬の職を辞してから余計に感じている。
「コリャ、これからもマズいことはことはできないな」などと、またしても僧侶としての資質に欠けるような思考を巡らしつつ、なぜ須田先生がここにいるのかを聞けば
「千葉の牧場にいる管理馬を見て回る途中で、ここに立ち寄りのんびりと我妻さんのポニーを見て息抜きしている」
ということだった。

これは、すごく分かる。
馬の仕事に従事している人は、本当にとんでもなく日々が忙しい。
馬にまみれて忙殺される中、息抜きとして眺めたいのは、やっぱり馬なのだ。
観察する気持ちを排除し、のんびりと鑑賞する。
青い空や緑の大地と、ここまで似合う生物は他にないであろう。
ぼーっと見るのもよし、もしくは目を閉じ存在を感じながら、うたた寝するのもよし。
向き合うだけで、浄化される。
夜なら焚火だが、日中であれば断然、馬だ。
ウラで何をしているのか分からない、坊主のとってつけたような説法より、よほど馬だ。
(つづく)
文:国分 二朗
編集:椎葉 権成・近藤 将太
著作:Creem Pan
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