理解できないということは🐴
- 7月17日
- 読了時間: 4分

父・マヤノトップガンと瓜二つのルミノックスが好きすぎて、
一般人なのに馬を買ってしまった「すあま」の、
愛があふれる推し活日記的連載です。
馴れ初めの話をしようと思う。

ルミぽんに出会ったのは、確か乗馬クラブに通い始めて1年近く経った頃だったと思う。いや、出会った…と言っても、ルミぽんという馬の存在は前から知っていた。私が当時、何度か乗ったことのある馬の隣の馬房にいたからだ。その馬にご褒美のオヤツをあげに行ったら、「ボクも〜」と言いたげなルミぽんが白眼を剥いていた。だからお情けでリンゴの皮なんかをくれてやっていた。その程度の関係の馬、だった。
それが乗馬を初めて一年近く経って、やっとこさ私が駈歩のレッスンに出るようになったら、今日はルミノックスという馬がお相手であるらしい。私は彼の馬装(鞍やハミを付けるなどの乗るための準備)をするため、まずはルミノックスの馬房に入った。
正直ちょっとだけビビっていたと思う。ルミノックスに、という訳ではなく、一般的に、馬房に入ると「オレのプライベートスペースに断りもなく入るとは何事だ‼︎」とお怒りになる馬もいるからだ。馬房に入った私に、ルミノックスはーーー頬にキスをしてくれた。柔らかい鼻先がそっと、頬の下の方に触れる。
どうしよう、と思った。この馬は何を思って、いきなり部屋に入ってきた人間に、こんな行動を取るのだろう…。

話は少し前後するが、この後ルミノックスを馬装してレッスンに連れ出したら、先生にこう言われたのだ。
「この馬は、お腹に穴があいているので、気をつけて乗ってくださいね。」
…穴⁉︎
見れば、そう、丁度拍車が当たる場所の皮膚が、傷付き血が滲んでいた。沢山の人間に乗られ、拍車を使い続けられることによって、皮膚に「穴」があいてしまったのだ。

痛かっただろう。人に傷つけられて嫌な思いも、理不尽に思いもしただろうに…それでもルミノックスは、馬房に入ってきた私の頬に、そっと鼻先を擦り寄せたのだ。
理解できないと思った。
理解できないけれど、その優しさに応えたいと思った。
理解できないものを排除するような昨今の風潮があるけれど、それは忌避すべきものではなくて、時に美しいものだと教えてくれた。あの時、ルミノックスが私に示してくれた優しさが。これから自分を傷付ける行動をする(騎乗して拍車を使う)と知っているはずなのに、どうして人間に、優しくできるのだろう。
いつか、その答えを知りたいと思った。
あの瞬間の、理解できない、けれど理解したいという強烈な感情に導かれ、私はルミノックスのオーナーになったのかもしれない。
…ルミぽんのオーナーになって3年以上経つ。
確証はないが、分かったことがある。
多分この馬、誰にでもキスしてたわ。
誰にでもは語弊があるかもしれないが、見込みのありそうな(=この先自分の上客になりそうな)人間に片っ端から愛想振り撒いてたわ。そしてまんまと引っかかってあまつさえ彼を身請けし老後の全ての面倒を見るまでに入れ込んだのが私です。本当に良いカモですね、ありがとうございました。
世の中には、理解できない方がいいこともある。


こうして、まんまとルミぽんに誑し込まれた私は、今日も預託料を稼ぐために、あくせく働くのでありましたとさ。
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文:すあま
編集:椎葉 権成
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