「エルコンドルパサーがダービーを走っていたら?」という危険な質問🐴👨🏻🦲🪷
- Loveuma.

- 8 分前
- 読了時間: 4分

かつて育成牧場の場長を務め、現在は曹洞宗妙安寺の僧侶。
「ウマのお坊さん」こと国分二朗が、徒然なるままに馬にまつわる日々を綴ります。
方便と脱線
まず最初は「エルコンドルパサーがダービーを走っていたら?」の質問。
これは本当に危険な質問だ。20年前のピリピリした雰囲気を知る記者さんであれば、同意してもらえるだろう。怒らせたフグのつかみ取りに挑むに等しい。先生が大嫌いだったタラレバの話だし、特に「勝ち負けの予想に関する質問」というのは先生にとって禁忌だった。寝起きのゴジラの尻尾で縄跳びに挑むに等しい、愚行なのだ。
実はこの質問を事前提出する時点で、私はまあまあ緊張していた。しかし、突っ返されなかったのでOKということなのだろう。どんな答えが来るのか楽しみだった。そして、こう返ってきた。
「ジャパンカップと同じような結果になったんじゃないですか」
えええ。ちょっと先生、カッコいい答えじゃないですか。余韻を含む答えだし、ちゃんと準備している感があるじゃないですか。
これは期待以上だった。今後の質問も、こんな感じで古畑任三郎のようにクールでニヒル、かつユーモラスな答えが続くのだろうか。
しかし。もちろん、そんなことは全然なかった。後の「フランス遠征を長期に決めた経緯」を聞いたときに、全てのプランが脆くも崩れていく。
もちろん私はその答えを知っているし、2、3分長くても5分程度で終わるのかと思っていた。
が、何故か話はどんどん時間をさかのぼっていく。先生がトレセンに入る前の北海道時代までいってしまった。銀河鉄道999並みの力強い脱線。もはやレールは存在していなかった。蒸気機関車のフリーラン。
途中で、先生自ら「だいぶ脱線した。何の話だったんだっけ?」と問われるほどであった。「遠征を長期に決めた経緯ですよ」と、どうにか軌道修正。ホッとしたのもつかの間「ああそうだった」と再び話し始めた内容が、またいきなり脱線していったのには、さすがに驚いた。
そして、その時にフト思った。
先生はきっとこっち(脱線)の方を話したいんだろうな。
もう30年近い付き合いになるので、さすがに全て聞いたことある話ではある。大学卒業から北海道、そしてアメリカへ行って競馬の世界へと惹かれていく話。これはじっくり聞いていると本当に面白い。単純に珍道中としても完成しているし、革新的なことを常に模索していた「調教師、二ノ宮敬宇」の礎がココで完成されていったのだ、と分かる。昔はよく居酒屋で酎ハイを煽りながら、これらの話を聞いたものだ。大いに触発され「自分も頑張らねば」と奮い立ちながら帰路についていた日々がよみがえる。
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「方便(ほうべん)」とある。
「真理に導くための仮の手段」や「相手に応じた導き方」のことだ。今は俗語と化し、「目的達成のための便宜的な手段」と少々嫌らしい意味合いで捉えられているが、本来は違う。
じつはエルコンドルパサーやナカヤマフェスタの凱旋門賞というのは、先生にとって方便なのではないだろうか。
私たちは水面に見える波紋ばかりを見ている。広がっては消えていく波紋。その大きさに煌びやかさに、つい注目し過ぎている。
でもその下には静かで深い水があるのだ。波紋を波紋たらしめる、本当の理由はそこにある。
この2頭の波紋は見事であった。でもやはり導入であり、プロローグであり方便なのだ。
先生の思いが溶け込んでいる水の深みを知っていなければ、ありきたりの名馬列伝でおわってしまう。
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とはいえ。
ファンの方々はエルコンやフェスタの話がもっと聞きたいのだと思う。
先生がこの2頭をキッカケにもっと馬の世界の面白さ、深淵を知ってもらいたいと試みるのは分かる。けれどもいかんせん、導きが急すぎるのだ。
初めての水泳教室で、ジャックマイヨールがフリーダイビングを教えるようなものだ。深淵の到達まで、まるで垂直潜水。グランブルーの世界が繰り広げられている。
先生の話はどんどん深度を増していく。つまり派手な脱線話は続いている。コントロール不能。
まるでナカヤマフェスタではないか。
そういえば先生も言っていた。フェスタは御するのを諦めてから良くなったと。そうだ。御そうとするからいけないのだ。フェスタも確固たる自我を押さえつけたから、大騒ぎとなったのだ。
だいたい私ごときが、先生の話を導こうとするなどおこがましかった。ゴジラの放射熱線が、スナイパーのようにピンポイントで標的を破壊していたら興ざめだろう。縦横無尽に破壊し尽くすからこそ、迫力があって観る者の魂を震わせるのだ。
私は微笑みつつ、話を聞くことに徹した。そういえばグランブルーという映画も全く理解不能の世界だったが、楽しかった。その世界をちょっと覗いてみたいと思った。
楽し気に脱線を続け、プランを崩壊し続ける先生の話を聞いて、少しでも馬の世界を覗いてみたいと思ってくれたら、こんなに嬉しいことはない。
(了)
ちなみにできた質問は予定の三分の一程度でした。ユーチューブの動画でも出しますが、脱線部分はほぼカットしております。念のため。

文:国分 二朗
編集:椎葉 権成
著作:Creem Pan


























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