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上岡絵馬の存続は困難の連続…それでも守り続ける理由とは🐴👨🏻‍🦲🪷

  • 11 時間前
  • 読了時間: 4分


かつて育成牧場の場長を務め、現在は曹洞宗妙安寺の僧侶。

「ウマのお坊さん」こと国分二朗が、徒然なるままに馬にまつわる日々を綴ります。


「お前は上岡観音様から授かった子供なんだよ」


相当な難産だったそうだ。

母親を取るか、赤子を取るか。

そんな選択が迫られる中、祖父が馬頭観音で祈祷をし、お札を持ってきてくれた。

おかげで無事に出産が済んだという。

そんな話を祖母から繰り返し聞かされ、

「お前は上岡観音様から授かった子供なんだよ」

と言われ育ったのだ。





「祖母の言葉が、ずっと頭の中に残っているんだよね」

なんと素敵な話ではないか。

上岡観音様から授けられた根岸さんが、観音を守り続けている。

それってもう根岸さん、観音じゃん。

というか、授けられたんだから、そもそも血統的に観音って話じゃん。

絵馬を守るために三面六臂のご活躍だから、もう馬頭観音そのものじゃん。

変に合点がいってしまった。


ただ保存会の道のりは常に困難であった。

単純に「絵馬の描き手がいない」からだ。

絵馬は庶民のものだから、高価であってはいけない。

ゆえに利潤も少ない。

しかも煩わしいまでに手間がかかり、自分のオリジナルティーを出すことも許されない。

となると、そうそう手を上げてくれる作家はいない。

最後の書き手であった方がそろそろ引退を、となり根岸さんは方々を探した。

遠くは青森まで。


困り果てた頃、現在の絵馬制作者である津村さんとやっと出会ったそうだ。

板絵の研究家であり、自身が美術家であり、教育者でもあった津村さんは、上岡絵馬存続の意義を十分すぎるほど理解し、今現在ただ一人の制作者として描き続てくれている。


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「観世音菩薩」とある。

人々の救いを求める声を聞けば、ただちに救済してくれるのだという。だから世間一般のイメージは「願い事を叶えてくれる神様」だろう。


私もそう思っていた。じつはこれ、間違っているのだ。

以下は、わたしを指導してくれた老師から聞いた話だ。


老師様の寺には毎月の観音例祭(ご祈祷)を欠かさない一人の檀家さんがいた。

感心するほど信心深い方だったという。

しかし残念ながら、その身には不幸な出来事が立て続けに起きていた。

これでは信仰心など無くなってしまうのではないか、と心配した老師にその人はこう答えたのだ。


「辛い時ほど観音様が見守ってくれている」


内心驚きながら老師が話を聞くと


「私は願い事をしないのです。ただ進もうとする私を見守ってくださいというだけです」


観音菩薩をそばに感じているんです、とその人は微笑んだ。


老師様はこの檀家さんから、こう学んだと話を締めくくった。

「願いをかなえるのが観音さまなのではない。そっと寄り添い一緒に進んでくれるのが観世音菩薩なのですよ」。


どうであろうか?

都合の好い願い事ばかりして、惰眠をむさぼり続けていた私にはゾッとするような話でもある。


だってすべてを見守られているのだから。


そして上岡観音様にとって、根岸さんは見守り甲斐がある方に違いないのだろうな、と思うのだ。


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伝統を守られている上岡絵馬ではあるが、民衆の文化であるがゆえにあるのが時代時代だ。

馬の絵だけでは駄目だということで、牛の絵もある。

機械化の波に乗ってトラクターの絵もある。

馬の絵に関しても毎年のように新作を出す。

これは根岸さんと津村さんで話し合い、上岡絵馬の約束事の中で作られている。


去年の夏、根岸さんと話している中で、フト思い付き提案してみた。


「今は競馬が人気あるし、サラブレッドも良いんじゃないですか?」


上岡絵馬に出てくる馬は、在来種がベースだ。

だから顔に流星は無い。

脚元に白がある馬もいない。


だから型紙はそのままに、額や足元に白い模様を付ければ、これは競走馬です。サラブレッドですよ、と出せるのではないですか。

そう説明したら、根岸さんはすごく喜んでくれて「それはイイ、それはイイ」と何度も繰り返してくれた。


というわけで。今年の新作の中に黒鹿毛の流星と、鹿毛の流星の馬がいます。

流星の形を見れば分かってもらえると思いますが、モデルはエルコンドルパサーとナカヤマフェスタとなります。


ぜひ手に取ってくださいね。


上岡絵馬の構図。左が「ハネ」、右が「タチ」。今年の新作。モデルはあの馬達。
上岡絵馬の構図。左が「ハネ」、右が「タチ」。今年の新作。モデルはあの馬達。






文:国分 二朗

編集:椎葉 権成

著作:Creem Pan

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