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🐎引退競走馬の新たな可能性と、馬と人の未来

  • 20 時間前
  • 読了時間: 5分


引退馬支援のパイオニアであり、認定NPO法人引退馬協会・代表理事の沼田恭子氏が、

馬と暮らす毎日から抱く思いを綴ります。

サムネール画像:タービランス(引退馬協会所有馬/フォスターホース)とともに


日本の競馬は世界的に見ても非常に盛んで、国民的スポーツとして愛されています。しかし、海外の主要な競馬開催国と比べて、私たち日本の馬文化には大きな違いがあることをご存知でしょうか?

それは、サラブレッド以外の馬の生産が極端に少ないという点です。


放牧中のサラブレッド・クレスコグランド(左/引退馬協会フォスターホース)と、中間種ハフリンガーのドスくん。ハフリンガーも乗馬でよく使われる種です。画像提供:いずれも引退馬協会
放牧中のサラブレッド・クレスコグランド(左/引退馬協会フォスターホース)と、中間種ハフリンガーのドスくん。ハフリンガーも乗馬でよく使われる種です。画像提供:いずれも引退馬協会



スポーツカーと乗用車? 日本の馬事情


競馬が盛んなアメリカ、イギリス、フランスなどでは、サラブレッドだけでなく、乗用馬として活用される「中間種」と呼ばれる馬たちの生産も古くから行なわれています。


サラブレッドは馬の分類でいえば「軽種」にあたり、例えるならF1カーのような「スポーツカー」です。速く走ることに特化して改良されてきました。

一方、セルフランセ、ハノーバー、ウエストファーレン、ハフリンガーといった中間種は、例えるなら誰もが普通に乗る「一般乗用車」のような存在。乗用馬として安定した気質と適性を持っています。


ところが日本では、この圧倒的に多い「スポーツカータイプ」のサラブレッドを、時間をかけて乗用馬として活用しようとしています。元々、速く走るためだけに創られた品種ですから、乗馬には向かない馬が出てくるのも当然の現実です。



引退競走馬の「セカンドキャリア」を支える挑戦


そんな引退競走馬たちの「セカンドキャリア」を支援するため、引退馬協会では「再就職支援プログラム」で馬を受け入れ、乗用馬としてのリトレーニングを実施しています。


サラブレッドである彼らの訓練は、まさに馬の再教育。

競馬では速く走ることだけを求められてきた馬たちに、動かないで立っていること、ゆっくり歩くこと、そしてただ真っ直ぐ走るのではなく、右に回ったり、左に回ったりと円を描くことを教えていきます。


まだ若い馬たちなので柔軟性はありますが、中には乗馬としての適性が見られない馬も少なくありません。「乗馬としてのお仕事は難しい」と判断せざるを得ないケースも出てきています。それは、馬と深く関わるほど避けて通れない現実だと感じています。


再就職支援プログラムでリトレーニング中のノーブルマーズ(セン馬、5月10日で満13歳)、通称オムレツくん。2018宝塚記念3着、目黒記念2着。その後南関東へ移籍し9歳まで競走生活を送っていました。いまもファンの方からのプレゼントなどが届く人気者。次のキャリアへ向けて頑張っています!
再就職支援プログラムでリトレーニング中のノーブルマーズ(セン馬、5月10日で満13歳)、通称オムレツくん。2018宝塚記念3着、目黒記念2着。その後南関東へ移籍し9歳まで競走生活を送っていました。いまもファンの方からのプレゼントなどが届く人気者。次のキャリアへ向けて頑張っています!

乗馬だけじゃない! 馬が持つ新たな可能性


乗馬には向かなくても、人との触れ合いにおいてはとても穏やかで、素晴らしい面をたくさん持っている馬たちもいます。


最近では、馬のサイエンス研究も進み、私たち人間にはない馬たちのユニークな能力が次々と解明されてきました。特に注目されているのが「ミラーリング」という能力です。馬が人の気持ちを鏡のように映し出すこの特徴を活かして、何かできないかと考える人が増えています。


しかし、残念ながら、日本ではまだまだ馬が身近な存在とは言えません。


  • 「馬の牧場は遠すぎる…」

  • 「乗馬クラブは敷居が高い気がする…」

  • 「もっとゆっくり馬と触れ合いたい、過ごしたい」


そんな声も多く聞かれます。そして、「馬の持つ特別な能力を活かして、企業研修やセラピーのような新しい取り組みはできないだろうか?」という期待も高まっています。


気性的に乗馬よりもコンパニオンホースとしての適性がありそうな、再就職支援プログラムでリトレーニング中のインカラム(セン馬、3月1日で満7歳)。姿は父フェノーメノそっくり! ふれあいイベントで活躍しています
気性的に乗馬よりもコンパニオンホースとしての適性がありそうな、再就職支援プログラムでリトレーニング中のインカラム(セン馬、3月1日で満7歳)。姿は父フェノーメノそっくり! ふれあいイベントで活躍しています

競走馬としてだけでなく、その後の人生で人々に寄り添い、心豊かな時間を与えてくれる馬たち。彼らの計り知れない可能性を引き出し、馬と人がもっと身近で豊かな関係を築ける未来を創造することが、わたしの大きな願いであり、希望です。


この課題に応えるべく、乗馬倶楽部イグレットでは今年の初夏頃より、引退馬の新たな可能性を模索する事業をスタートします。まずは「馬カフェ」のように気軽に馬と触れ合える場を提供し、馬を介した研修や、馬を見ながら仕事ができるスペースも計画中です。


馬たちの温かさ、賢さ、そして彼らが持つユニークな能力を、もっと多くの方に身近に感じていただきたい。今後、この場で進捗や引退馬たちの活躍についてお伝えしていきますので、どうぞご期待ください。


[お知らせ]


2月21日(土)から3日間、東京・世田谷の馬事公苑で国内最大の馬のイベント「第7回ホースメッセ」が開催されます。引退馬協会も情報展示と物販のブースを出店いたします。皆さま、ぜひお立ち寄りください。


また、初日21日13時半よりインドアアリーナ(屋内馬場)にて、松田有宏氏(北海道浦河町町長)、谷川貴英氏(谷川牧場代表、日高軽種馬農協副理事)をお迎えして、「うまのふるさと」モニュメントをテーマとしたトークイベントも実施します。聞き手、進行は競馬ライター、キャスターの浅野靖典氏です。どうぞよろしくお願いします。


2026年2月21日(土)〜23(月祝) 9:00〜17:00 JRA馬事公苑


●トークイベント

2月21日(土)13:30〜14:30 馬事公苑 インドアアリーナ

「〜すべての馬が帰る場所〜

 あなたの想い出の馬を『うまのふるさと』に」


Profile

沼田恭子(ぬまたきょうこ)


広島県生まれ。乗馬倶楽部イグレット 代表取締役、認定NPO法人引退馬協会 代表理事。1997年、引退馬協会の前身となる「イグレット軽種馬フォスターペアレントの会」を設立。2011年「特定非営利活動法人引退馬協会」設立、2013年「認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)」となった。




文:沼田 恭子

構成:Yumiko Okayama

編集:椎葉 権成

著作:Creem Pan


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