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最低限守ってほしい…競馬場でのマナーについて思うこと🐴👨🏻‍🦲🪷


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かつて育成牧場の場長を務め、現在は曹洞宗妙安寺の僧侶。

「ウマのお坊さん」こと国分二朗が、徒然なるままに馬にまつわる日々を綴ります。


競馬場のルールとマナー、そして傘の話。


さて競馬場のマナーの問題である。 と、その前に「マナーが隅々までグググイッと行き届いた世界」と聞くと、皆さんどう言った感情を持つのであろうか。 早朝の散歩のような澄み切った清々としたもの、だろうか。 それともネバネバと絡みつく得体の知れないもの、だろうか。


この両極端な二面性を持っているのが「マナー」だろう。 マナーはその世界を知り、分かってしまえば物事をなしていくのに、潤滑油のような役割を果たしてくれる。 しかし、まだ未知の世界であれば(特にそれが苦手なジャンルであれば)、開けるのがどうにも気の進まない、重厚で錆びついた扉となってしまう。



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そもそもマナーには納得できないものも多い。 わたしはとっくに半世紀以上生きている身であるが、いまだにネクタイが大嫌いだ。 なんで人体の一番の弱点である喉を、わざわざ自ら締めあげる不可解な格好がフォーマルなのかさっぱり理解できない。


あとは消えてなくなるマナーもある。 ご飯はフォークの背に乗せて食べる、というアレ。 子供だった頃、衝撃的だった。 しかもフォークを右手に持ち替えてはイケナイのだ、と教わった。 レストランでどんなご馳走を食べようが、感想が「食べ難かった」だけで埋め尽くされる。 私はあの時、大人って本当はバカなのではないかとホンキで思っていた子供なので、「マナー」と聞くと咄嗟にファイティングポーズをとるか、立ち入らずとっとと逃げだすタイプではある。


けど道にゴミが落ちているとやっぱり不快であるし、痰を吐いて歩くオッサンには、そっと心の中で「あなたの今日一日がそれなりに不幸でありますように」と呪いをかけるくらいには、マナーを大切にしたいと思っている。 結局のところ心地よいマナーとは、環境や人それぞれなの塩梅によるものだ。 と、あいまいに結論づけたところで、昨今(というかずっと昔から。そしてこれからも)騒がれている競馬場マナーの話に戻ろう。



浦和競馬場。ラチ際だと馬が近い。
浦和競馬場。ラチ際だと馬が近い。

まず競馬場のホームページに記載されているものを見てみた。

撮影に関する注意事項が多く目立つが、観戦に関しての項目はそれほどでもない。

あくまでも常識的なものばかりだ。

競馬場らしいなと思うのは「パドックやコースにモノを投げ入れる、(あらゆる場所で)モノを投げ上げる行為」はご法度というくらいであろうか。

それしてもパドックにモノを投げ入れるって。

見たことも聞いたことも無いが、やはり馬券を外しての腹いせ行為なのか。

それともフィギュアスケートでリンクに投げ入れられる花束やヌイグルのような「おひねり」的なものなのか。

せめておひねり側であってほしいとは思うが、どちらにせよ非常に危険な行為なので絶対にやってはいけないですよ。


観戦するいちファンとして、実害を感じるのは、やはり「席(場所)取り」だろうか。

競馬場はパドックと、馬券売り場と、スタンド前を延々とマグロのように回遊して楽しむ場所だ。

ただ、やっぱり疲れる。

大抵の場合、馬券も外れているので余計に疲れる。

ちょっと座りたいな、と思うのだが、見事に座る場所が無い。

そこかしこに誰でも座れるベンチはあるのに、一切座れない。

ほぼすべてのベンチに、残置物があるからだ。

それも私物のバッグとか所有物ではなく、レープロとかマークシートがポンと置いてある。

無料の回収されても懐が痛まないもので、微妙にナワバリを主張している。

実に姑息極まりない手段だ。

ほとんどの人が、無駄にトラブルを避けたい消極的平和主義者であることを知っているからこその、この人間性を疑ういやらしい手段に憤りを感じるのは私だけではないだろう。

レープロを残した奴に「絶対に馬券が当たりませんように」と、わりかし本気目の呪いをかけるくらいにはイラっとする。


このテの話になると、「手拍子止めろ」とか「オイオイ」止めろとか、モノ申したくなる人々の挙手がワラワラと止まらなくなるので、「JRAからのお願い・ご注意」が意外と少ない、という話に戻そう。


競馬場としては、「まず来てもらいたい」というのがある。

だから「あれするな」「これするな」という約束事を、ギリギリまで作りたくないというのが本音だ。

だからこそ逆を言えば、提示してあることはマナーではなく、もはやルール。

最低限、守って欲しいことなので守ってください。

っていうか守れ。馬券外れろ。


で、やっと今回の本題、カサの話だ。

今現在「JRAからのお願い・ご注意」上に記載は無い。

雰囲気的に、そのうち出てくるかもしれないが、とにかく今現在、カサの使用に関してなんら注意喚起はされていない。

だからルールではなく、あくまでマナー的なお話になる。

まずカサの何が悪いのかっていうことになるが、知らない人にとっては本当に「???」だろう。

「雨が降っても、カサをさすな」なんてマナーは、理不尽さ度合でいったら「フォークの背にライス」のはるか上を行く。

なのでマナー云々の前提として、まず馬のお話をしたいと思う。


「馬は臆病」である。

一般人が思う臆病の7倍以上は臆病だ。

10万人を超える観衆の前で堂々と走る勇姿からは想像できないかもしれないが、あれはレースという非日常に興奮しすぎて、ある種イッっちゃってる状態といえる。

まず馬は、草食動物として捕食される側の「逃げる」本能が最上位にある。

例えば目の前の草むらがガサガサ動いたら、と想像して欲しい。

ビビりながらも「ナニ」がそこにいるのか確認するのが人間だ。

出てくるのがネコであれば「キャワイー!」となるし、蛇であれば逃げるし、江頭2:50さんであれば腰を抜かすだろう。

いずれにせよ「確認してから行動」を選択する。


一方で馬はどうであるのか。

ガサっとなった瞬間「逃げる一択」だ。

ナニ?なんて全力で逃げながら確認すればいいのだ。

一瞬の躊躇が、捕食されるか否か、の分かれ道になる。

脊髄反射で全力逃走するようにできている。

それを調教し「走る」というピリッとした本能を活かしつつ、信頼関係を前提に、様々な事象に慣らして、ある程度の大人しさを得ているのが競走馬ということになる。


(つづく)



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文:国分 二朗

編集:椎葉 権成・近藤 将太

著作:Creem Pan

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