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緊張の馬術大会の空気の中、圧巻だったポニーのシルフィー🐴👨🏻‍🦲🪷

  • 2 日前
  • 読了時間: 3分


かつて育成牧場の場長を務め、現在は曹洞宗妙安寺の僧侶。

「ウマのお坊さん」こと国分二朗が、徒然なるままに馬にまつわる日々を綴ります。


ひねくれポニーのシルフィー


下見を終えると、いよいよ競技が始まった。


馬術の大会というのは基本的に静かなのだと知る。

緊張感を持った沈黙で、見守っているといった感じ。

騒々しいスポーツしか知らない私には、かなり苦手な部類の緊張感だ。


そして私の役割はオブザーバーであった。

馬場の内側にいて、子供たちがコースに迷っている様子があったら、道を示してあげる係だ。


なんだか重要っぽいが、実はそうでもない。



だって今回は自分一人で馬を操作できる子供たちが多かったから。

つまりヒポトピアとしては、子供が自力でやることを極力尊重したい。

だから目立つ場所にはいるが、要は「なるべく何もするな」というミッションでもあった。


しかしこのオブザーバーが、完全に特等席であった。

だって、なるべく関わらないにしろ、すぐ傍で見られるから。

見守っている親御さんこそが、ここに居たいであろうよと思いつつ、子供たちの勇姿を堪能する。


子供が懸命に馬を操作し、私のそばを通過していく度に涙腺が崩壊しそうになる。

ポエマーであればどんなに素晴らしい言葉を紡げるのだろうと、自分の表現力を呪う程に温かい光景が目の前で繰り広げられていた。


それにしても、である。


改めて馬たちの実力を見せつけられた一日であった。


普段ヒポトピアの手伝いで、子供たちのレッスンに付き合うときは馬を引くリーダーか、横でサポートするサイドをすることが多い。


だから今日は、まるで「距離感」が違った。

目の前で子供たちが単独でポツンと乗っている光景が、あまりに眩しすぎる。


つい傍へ寄り添いたい気持ちも湧くのだが、実のところ全くその必要は無かった。

子供達ももちろん上手であったが、馬達の安定感が「いいとも」のタモリさんレベル。

そのブレのなさは炊飯器の保温機能もビックリな程であった。


とくに圧巻だったのがポニーのシルフィーという馬だった。


実は普段のシルフィーはとても弱いウマだ。


つねにヒポトピアの馬ヒエラルキーの最下層にいる。

自分より小さいミニチュアポニーにもイジメられてしまうので、一緒に放牧できる馬がいない。

一頭でポツンといるか、より穏やかで力を誇示しない優しい馬としかペアを組めない。


そんな馬だ。


だがレッスンでは常に人気でもある。

小さな子供にも、ちょうどいいサイズということもあるのだろう。

実際にセラピーホースとしても優秀である。

ちゃんと仕事を分かっている感じで、ジッとできない多動の子供が乗ってもへっちゃらだ。


でも性格がちょっとイジけているというか、感じの悪い部分がある。

リーダーをする大人には噛み付いてくるのだ。

静止させたときや、子供が乗った瞬間にブチッと。


𠮟れない瞬間を狙ってくる狡猾さもある。

しかも本気で噛み付くわけではなく、憂さ晴らしにちょっと噛んでくる印象。


そんなひねくれた面も知っているので、私はルフィーを信用しきれていなかった。


だが感動した。


あんた凄いよ。


子供を乗せて歩くシルフィーは実に堂々としている。


まだ正確に指示を出せない子供もいたが、シルフィーが導いている感すらあるではないか。


誇らしげなシルフィーの顔が、私の指示など全く必要としていないことを示していた。


ひょっとしたら普段の彼の噛み付きは


「僕はちゃんと一人(頭)でできるんだよ。余計な指示をしないでおくれよ」


という主張なのかもしれない。


大エースのシルフィー。邪魔すんなと小さな背中が語っている。
大エースのシルフィー。邪魔すんなと小さな背中が語っている。

つづく




文:国分 二朗

編集:椎葉 権成

著作:Creem Pan

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