「そこにいるだけでいい」という「存在価値」🐴
- 20 時間前
- 読了時間: 5分

引退馬支援のパイオニアであり、認定NPO法人引退馬協会・代表理事の沼田恭子氏が、
馬と暮らす毎日から抱く思いを綴ります。
サムネール画像:タービランス(引退馬協会所有馬/フォスターホース)とともに
コロナ禍の頃から温めてきた「馬との新しい仕事」がいよいよ動き出します。その一環として、乗馬倶楽部イグレット内に新厩舎が建設中です。
1階は馬房とくつろぎのテラスとなり、2階はワークスペースに。引退馬協会の事務所もここに入る予定です。
工事はまだ続いていますが、先日、引退馬協会の会員さんのふれあいイベント「フォスターホースと過ごす日」に合わせて、一部のスペースで引退馬協会の歩みを振り返る特別展示を行いました(特別展示はこの日のみ。厩舎完成後にあらためてお披露目と展示を行います)。

漫画の題材となったグラールストーン
今回の特別展示では、やまさき拓味先生の『優駿たちの蹄跡』も公開させていただきました。『優駿たちの蹄跡』は競走生活を終えた馬たちを描いた漫画で、やまさき先生が実際に取材され、個々の馬に焦点を当てたオリジナルストーリーが毎回展開していきます。
展示で取り上げたのは、『優駿たちの蹄跡』第80戦、単行本では第10巻に収録されている「ボクの存在価値」。22ページの読み切り漫画です。登場するのは栗毛のサラブレッド、ナイスネイチャ半弟のグラールストーン(1989.4.8‐2011.2.5 父ノーリュート 母ウラカワミユキ 浦河町・渡辺牧場産)です。
フォスターホース第1号として、縁もゆかりもない千葉の乗馬クラブに預けられたグラールストーン。重賞勝ちもなく、競走生活を引退しても種牡馬にはなれず、乗馬としてもうまくできない…ボクには何もない! 何もできない!と悩むグラールと、引退馬支援を始めたばかりの私が描かれています。


どの馬にもある「ボクの存在価値」
やまさき先生が取材に来られたときのことを、今でもはっきり覚えています。取材の中で私は、脳腫瘍の治療をしていた夫が1年ほどは植物状態だったことを話しました。
病床に毎日通い、夫の顔を見て「そこにいてくれるだけでいい」「生きているだけでいい」、私はそう思っていた、と。
先生は静かに私の言葉に耳を傾けていただき、グラールストーンという馬のこと、そして始めたばかりの「イグレット軽種馬フォスターペアレントの会」(引退馬協会の前身)のことを一篇の素敵な漫画として描いてくださいました。

「ボクの存在価値」このタイトルに私は深く感動しました。
何もできなくても、ただそこにいてくれるだけでいい。生きているだけでいい。それこそが存在理由。そこに価値がある…。
当時の私はまだ引退馬について知らないことだらけで、『優駿たちの蹄跡』を読んで引退馬を巡るいろいろなことを勉強したりしていました。先生が描いてくれた「存在価値」、グラールの台詞のひとつひとつが、試行錯誤を続けていた私がまさに日々感じ、考えていたことでした。
この漫画が世に出たことで、フォスターペアレントの会のことをたくさんの方に知っていただくことができ、会員さんも増えました。やまさき先生には本当に感謝しております。
先生にはその後、引退馬協会の理事になっていただき、現在に至るまでずっとお世話になっています。常に新しい視点でものを捉え、思考し実践される先生の姿にこちらも刺激を受け、日々、前を向いて頑張っています。


どんな馬にも「存在価値」があります。 馬と人の未来をさらに価値あるものにするために、これからも活動を続けたいと思います。 新厩舎が完成したら、『ボクの存在価値』を含め、あらためて厩舎お披露目と引退馬協会の展示を行う予定です。たくさんの皆さまに見ていただけましたら幸いです。
Profile
沼田恭子(ぬまたきょうこ)
広島県生まれ。乗馬倶楽部イグレット 代表取締役、認定NPO法人引退馬協会 代表理事。1997年、引退馬協会の前身となる「イグレット軽種馬フォスターペアレントの会」を設立。2011年「特定非営利活動法人引退馬協会」設立、2013年「認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)」となった。
文:沼田 恭子
構成:Yumiko Okayama
編集:椎葉 権成
著作:Creem Pan

























コメント