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貴重な最期を密着撮影|プレストシンボリが教えてくれた、当たり前だけど大切なこと


作品概要


Loveuma.の運営会社でもある、"つくる"を通じて引退馬問題の前進を本気で目指す会社・Creem Pan(クリームパン)は、この度、ホースセラピーや児童発達支援・放課後デイサービスなどを行う一般社団法人ヒポトピア様のご協力のもと、引退馬・プレストシンボリの最期と、それを見送る人々の姿に密着し、その光景をまとめたショートドキュメンタリーを企画・制作し、2024年1月4日に動画共有プラットフォーム・YouTubeにて公開いたしました。 テーマは「一頭の馬生から見る、一日一日の大切さ」。

ヒポトピア代表の小泉さんと、プレストシンボリから、当たり前に過ぎていく日々の中にある、大切なものに気付かせてくれるかと思います。

ぜひLoveuma.のユーザーの皆さまにも、この作品のテーマはもとより、貴重な"馬の終末期"のリアルを収めた作品を観ていただくことで、より広い知見で引退馬問題についての見識を深めていただければ幸いです。

※この作品には馬の最期が含まれます


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制作の経緯



小泉さんより、高齢となったプレストシンボリとの日々を映像に収めておきたいと、お声がけをいただいたのが、作品制作の始まりでした。

まずはGoProという小型カメラを預けて日常を撮り溜めてもらう手法を採り、制作がスタートいたしました。


それから数ヶ月が経ったある日、小泉さんから「今朝方、プレストシンボリが立てなくなってしまい、今も苦戦中です」と、ご連絡をいただきました。弊社スタッフは皆それぞれ、その日は別の仕事があり、平林が夕方にやっと東京を出ることができました。しかしその日は、交通事故の影響で酷い渋滞に巻き込まれてしまい、到着を目指していた車中で、「すいません、今しがた亡くなりました」と、小泉さんより、ご連絡をいただきました。時刻は2022年10月7日19時40分でした。


その15分後ぐらいだったでしょうか。酷い雨が降り足場もぬかるむコンディションの中、平林がやっと現場に到着しました。ちょうど獣医さんが帰り支度をしている時だったそうです。本当に、少しの差でした。


最愛のパートナーが亡くなった直後に、撮影が入り、その映像が不特定多数の方に向けて発信することに、抵抗を持つ方も多いのではないでしょうか。しかし、小泉さんの強い気持ちのおかげで今回の作品は生まれました。

その決断に心から敬意を表すると共に、一人でも多くの方に小泉さんとプーちゃんの物語が届いてくれたらと願っております。


株式会社Creem Pan / Loveuma.運営事務局


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演出意図




今作は映像制作者として色々と実験を行った作品です。


私の拙作である、映画「今日もどこかで馬は生まれる」はナレーションをふんだんに使うことで、誰が観ても一定量の正しい情報を漏れなく理解ができるように作りました。しかし、同作を何度か鑑賞する中で、ある種テレビ番組的なその手法は、ドキュメンタリー映画にとって、果たして「正解」なのか、制作者として疑問を抱くようになりました。そんな思いから生まれた試行錯誤として、今回はナレーションは用いずに、人物や馬、施設などの説明も極力省き、引き算の考え方で制作しました。


結論、ナレーションを用いてしっかりと説明するスタイルも、今回のようなスタイルも、どちらも「正解」であるし、一つの作品の中に共存させることもできると気付きを得ることができ、良かったと思います。


そしてその他にも、この作品の制作を通じて、たくさんの実験をしております。


まず、普段は演出しかやらない(できない)私が、ドキュメンタリーで初めてカメラを回しました。それにより、本当は本編で使いたいけれど下手過ぎて使えない素材もたくさんありました(笑)

今回のように、ドキュメンタリー作品は「緊急対応力」が品質に直結する場合もあると思っていますので、カメラマンとしても精進したいと思う、良いきっかけをいただきました。


あとは制作の経緯にもある通り、取材対象者にGoProを預け、その撮影素材を本編にも採用するというのも新しい試みでした。首に掛けるアクセサリーも併用することで、意外に人物の音声もクリアに収録でき、ドキュメンタリーと相性の良い撮影手法であるというのが所感です。


その他では、プレストシンボリが亡くなった後、葬儀の前に馬房を訪れて次々と人が弔問する様子を撮りましたが、あのシーンは弔問客から決して見えない場所にカメラを構え、一切構図を変えずに長回しをしました。狙い通り、被写体の方々が撮影されていることを意識せず、自然な様子が撮影できたと思います。馬房の中に集音マイクがあったならば、なお良かったでしょう。


そして、これは編集段階の話になりますが、今回は若手スタッフの片川に任せるという試みもありました。素材を全て確認をして、本編で採用する可能性のあるシーンを事細かく指定し、起承転結も組み立てた上でバトンタッチをしました。合計4回ほど、確認と推敲を繰り返し、最後は私がまとめ上げ、もう一人のスタッフである椎葉が仕上げのグレーディング(映像に色を付ける作業)を行って、作品は完成を迎えました。


監督の意思がしっかりと通った上で作業領域が分担されることは、制作チームにとって理想の形です。適材適所で持ち場に集中できれば作品の品質も上がりますし、組織としての生産性の向上にも繋がります。ましてや、長編映画を一本作るということは(大袈裟ではなく)命懸けなので、負担を分散することが重要だと思っています。


今回は専門的な話をたくさん書かせていただきました。


しかし結局、この作品の最も強いところは「貴重な馬の終末期が映像に収められていること」だと思っています。これは私の力ではなく、小泉さんの胆力によって成り立ったものでしょう。


改めてこの作品に携われたことに感謝いたします。

この作品をご覧になられた人が、一日一日の中の幸せを大切にしようと思えたり、馬という大型動物と共に生きることをより深く考えるきっかけが生まれれば、監督として本望です。


株式会社Creem Pan

代表取締役 / クリエイティブディレクター

平林 健一

※このメッセージは2024年1月9日のものです


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小泉 弓子さんよりメッセージ




プレストシンボリ、プーちゃんと出会って、私の人生は大きく変わりました。


一頭の馬と一生を供にすることで、人生の主軸が自分から馬に変わったこと、沢山の悩みや困難を共に乗り越え、言葉には表せない素晴らしい日々を過ごせたこと。


人よりも早く年を取る動物を日々見守り、1日1日を大切に生きることの大切さを学んだこと。

馬の運命はあっという間に小さな事で変わってしまうこと。

何気ない日々に、いつも寄り添ってくれる、当たり前の存在の大切さ。

そしてそれをまた、次に繋いでいくこと。


簡単な事ばかりではないけれど、この私とプーちゃんとの日々を見て、一生のパートナーを持つ幸せが届きます様に。

私はきっと、ずっとこれからも馬に魅せられて生きていく、そんな気がしています。


一般社団法人ヒポトピア

代表理事

小泉 弓子

※このメッセージは2024年1月9日のものです


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クレジット


監督・撮影・編集:平林 健一

撮影:平本 淳也

編集:片川 晴喜

デザイン・グレーディング:椎葉 権成

出演:プレストシンボリ, 小泉 弓子

協力:一般社団法人 ヒポトピア

制作・著作:株式会社 Creem Pan


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2 Comments


制作側からのお話は大変興味深く読みました。


>ドキュメンタリー作品は「緊急対応力」が品質に直結する場合もある


映像作家であると同時にルポライターの勘を持つ人の言葉ですね。

記録を重ねるだけでは十分でない。予定も予想も超えた「今」の瞬間を寸秒も逃さずに捉えたい。そんな気迫が伝わってくるような気がします。

取材対象者にも機材を預けて撮影を委ねるという試みは、日々の記録の鮮度と一貫性を確保する一助になると思います。


他所でも書きましたが、このショート・フィルムには本当に強い感銘を受けました。

原動力となったプレストシンボリ号の存在感と小泉さんの決意もさることながら、本作の完成と発信はCreem Panにしか成し得なかった英断だと思います。


「馬の最期を見届け、見送る」という貴重なシーンが収められていることで、従来うやむやにされがちだった終末期のグレーゾーンに自然な光が当たり、人馬共生の現場の解像度がまた一段階上がりました。

出演者と平林監督始め制作スタッフの皆様に心からお礼を申し上げます。


視聴者の試金石ともなる作品だと感じました。

死という現実の重みを受け止める強さが自分にあるか? 尽きぬ悲しみを受け容れる心の深さがあるか? 自分は引退馬の支援活動にどこまで本気でコミットしたいのか?

これらを自問し、再確認するまたとない機会となるでしょう。

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「プーちゃ~ん、帰ろ!」

という優しい呼びかけに応えて、引き手もなく自分の意思でゆっくりと戻ってくるプーちゃん。

我々よりずっと大きくて力も強そうなのに、どうしてこれほど素直に、まるで幼い子供のように、一途にヒトを頼ってくれるんだろう?

これほどの信頼に報いるために、人間は何ができるんだろう?


そんなことを考えながら視聴させていただきました。

終わったとき、一つの答えが見えたような気がしました。:「最後まで共に戦うこと」


戦う相手は病魔であったり、運命であったり、世間の無知や無理解ゆえの批判であったり、様々です。

けれども戦う目的はひとつ。自分の最も大切なものを守ること。それに尽きると思います。

プーちゃんを何とか立ち上がらせようとする壮絶な努力は、まさに戦いでした。関係者は物理的にも心理的にも「戦場」にあるように見えました。


最善以上を尽くしたときに結果を悔いる必要はありません。

ただ受け容れ、前よりも強くなって進むだけ。進み続けるだけ。


馬から寄せられる信頼は恩寵であり勲章です。

小泉さんとヒポトピアの皆様が、これからもずっと「呼びかける人と応える馬」の物語を語り継いでゆかれることを願います。

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