馬たちが「帰ってこれる場所」を作りたい!リトレーニングも行う、"馬のふるさと"日高町の加藤ステーブル by 加藤芽衣さん
「withuma.」vol.83 加藤芽衣さん

Profile
お名前:加藤芽衣
居住地:北海道
年齢:32歳
X(旧:Twitter)|@katostable1989
第83回は、元大井競馬場誘導員で、現在は北海道日高町の生産・育成牧場、加藤ステーブルにお勤めの加藤芽衣さんです。
いったいどのような「withuma.」を送っていらっしゃるのでしょうか?
加藤芽衣さんの「withuma.」

写真:本人提供
私の父が開業し、今年で35年目になる株式会社 加藤ステーブルは、競走馬の生産・育成牧場です。
弟が家業を引き継ぎ、そのタイミングで私も実家に戻って、今は一緒に仕事をさせていただいております。


写真:本人提供
弊社は馬たちへの愛情をモットーに、競走馬への高品質な調教・管理技術を提供し、お預りさせていただいたご愛馬のレース成績向上と、競馬界の発展に貢献することを目標としています。
そして、私たちの求める「馬づくり」とは、単に若駒を立派な調教施設や、高級な飼料を用いて競走馬として送り出すことではありません。
競走馬の基本的な調整に加え、馬の心理面にも着目した独自のメニューを取り入れるなど、ご愛馬に携わる全ての皆様から乗りやすい、扱いやすいと言っていただけるような「走る馬づくり」に取り組んでいます。


写真:本人提供
私たちは生産から育成まで、愛情たっぷりに育てた馬たちが、将来必ず活躍すると期待をこめて送り出します。
今後の目標ですが、お預かりさせていただいたご愛馬と自社馬の活躍です。
大きなタイトルを取れるように誠心誠意尽力させていただきたいです!
加藤さんは元々大井競馬場の誘導員をしておられて、現在はご実家の加藤ステーブルでお仕事されているのですね。
競走成績だけではなく、「乗りやすい馬」、「扱いやすい馬」に育てることは、その馬の競馬キャリア、セカンドキャリア以降においても、大きなアドバンテージになるのではないかと思います。
生産馬や育成馬のご活躍を心よりお祈りしております!
加藤芽衣さんの「Loveuma.」

写真:本人提供
私の感じる馬の魅力ですが、たくさんあります(笑)
うまくまとめる自信はないですが、見た目も中身も、美しさで溢れているところでしょうか。
馬だけに限らず、どの動物もそうかもしれませんが、彼らはとても誠実です。
愛情を持って接する度に、信頼関係が強くなります。
言葉が通じなくても、自分が悲しい時や辛い時は寄り添ってくれる、そんな優しさがたくさんあります。
日々の生活で彼らに教えられることがいっぱいです。


写真:本人提供
お気に入りの馬も…選べませんね~(笑)
欲張りですが、これまで出会った馬たちみんなが大好きです。
でも、ボンちゃん(ボンネビルレコード)は自分と縁が深い馬だなと感じます。
大井競馬場で出会い、引退後の今も一緒にいる。
そして彼が繋げてくれた出会いもたくさんありますし、大好きな大井競馬場誘導馬スタッフのみんなと今も変わらない繋がりを作ってくれた事にも、本当に感謝しています。


写真:大井競馬場誘導員スタッフの皆さん(本人提供)
ボンちゃんは~…家族ですかね~(笑)
馬たちも含め、大井競馬場誘導馬スタッフで大家族な感覚です(笑)
長男:ボンちゃん、次男:ナイキさん(ナイキスターゲイザ)、三男:マグッペ(クリールマグナム)四男:メモリー(セイントメモリー)みたいに、トロちゃん(トロヴァオ)、カフジ(カフジフェニックス)の末っ子たちがいて。
お父さんの坂口社長という大黒柱がいて、私の先輩のお姉ちゃんたちがいる大家族!そんな感じです(笑)
言葉が通じなくても、心で通じることができるのは、馬という生き物の大きな魅力の一つだと私も感じています。
人間同士のコミュニケーションにおいても、馬から学ぶことは沢山ありますよね。
加藤さんが『家族』と呼ばれているボンネビルレコードは、大井競馬場所属の元競走馬・誘導馬で、現在は加藤ステーブルさんで余生を送っているそうです。
ちなみに、Loveuma.で連載中の『引退馬コレクション』というシリーズで、ボンネビルレコードの現在を紹介していますので、ご興味のある方は是非チェックしてみてください!
ボンネビルレコードの"今" 的場文男を背にブルーコンコルドやフリオーソらを下した、不屈の帝王!
引退馬問題について

写真:本人提供
競走馬を引退したサラブレッドのリトレーニングをしています。
今は引退した自社馬をリトレーニングしてスタッフの騎乗技術向上のため、帰ってきた子たちは頑張ってくれています。


写真:功労馬のサンツェッペリン(本人提供)
品種に問わず、功労馬や引退馬を受け入れてくださる牧場さんはありますが、決して数が多いわけではありません。
そして、飼育していく上でかかる費用も大動物に属する馬たちは大きいですから、簡単に出来ることではないと思います。

写真:本人提供
弊社でも少しずつですが、1つでも多くの命を救えるように、リトレーニングを始めました。
活動を継続していくことが大切だと思いますし、今はまだ小さな輪でも発信していき、1人でも多くの方の目に留まり、心に届き、大きな輪になってくれることを願い、続けていけたらいいなと思います。

写真:本人提供
私の住んでいる北海道の日高町は「馬のふるさと」と言われる場所です。
広大な土地・気候など、馬たちにとって過ごしやすい場所に住んでいるからこそ、馬をもっと身近に感じてもらえるように、馬に携わる人・興味を持ってくれる人が増えるように、たくさんの言葉や行動で伝えていきたいです。
本当の意味での「馬のふるさと」、『帰ってくる場所』を作っていけたらいいなと思います。
引退した自社馬を引き取って繋養しておられるのですね。
『帰ってくる場所』、とても素敵な言葉だと感じました。
引退馬問題には、「人」や「お金」の問題が付いて回ります。
面倒を見てあげたいと思っても、なかなか難しいというケースもあるかと思います。。
そういった中で、加藤ステーブルさんのような取り組みは素晴らしいと感じますし、最近は生産牧場さんでも、リードホースとして自社馬を迎え入れたり、といったケースが増えた気がします。
この輪が更に広がると良いですよね。
今回は、元大井競馬場誘導員で、現在は北海道日高町の生産・育成牧場、加藤ステーブルにお勤めの加藤芽衣さんの「withuma.」を伺いました!
隔週月曜更新してまいりますので、次回もよろしくお願いいたします!
「withuma.」では、馬にまつわる活動や、その思いについて発信していただける方を募集しております。
リモート取材は一切なく、専用フォームからアンケートにお答えいただくと、その内容が記事になります。
今後も「withuma.」を通して、引退馬問題前進の一助となれるよう、微力ながら馬事産業・文化に携わる人を発信していきますので、是非皆さまからのご応募をお待ちしております!
▼詳細は下記バナーをクリック!
協力:加藤芽衣さん 取材・文:片川 晴喜 編集:椎葉 権成 著作:Creem Pan
『引退馬コレクション』のボンちゃん登場回にポストした感想の繰り返し:
引退馬に “終のすみか” を提供してあげられる加藤ステーブルの環境がウラヤマシイ😆‼️
お父様から始まった馬づくりの伝統を、弟さんと芽衣さんが誠実に引き継いでこられた努力の賜物ですね。👏🏽🐴 👏🏿🐴 👏🏾🐴
お馬たちに元気で長生きをと願う一方、このごろ考えるのは、各地にちゃんとした「馬の霊園」ができればいいなぁ、ということ。
やむをえず屠畜や安楽死に処される個体も含め、全ての馬のたてがみを一房ずつ霊園に納めて馬名と共に祀ることができれば。どの馬も誰かの名馬なのだから。
現地へ出向いてお墓参りするだけでなく、サイバー・セメタリー(バーチャル霊園)をつくれば個人の端末からでもネットでアクセスできますよね。
馬名検索で静止画像のみ呼び出して手を合わせてもいいし、賛否は大いにあるけど、生成AIで目当ての馬を “復活” させるオプションがあってもいいと思います。
大好きだったあの一頭が、はるかな別世界の広い野原や雲の絨毯の上を自由に駆け回る姿を見られるとしたら。。。
人間の自己満足にすぎないかもしれない。
でも、生前に伝えきれなかった感謝や心の奥にずっと抱えてきた後悔や、これからもあなたの仲間(馬)と一緒に生きてゆくという決意なんかを受け止めてもらえる場所があるのは、悪いことではないと思うのです。引退馬支援の最終ステージとして、今後も考えていきたいテーマです。