top of page

3つの特徴を分かりやすく解説✍️ TCCの引退競走馬支援について🐴



引退馬支援の事業家として業界を牽引する、株式会社 TCC Japan・代表取締役の山本 高之氏が、

「馬のミライ」をつくるための、考えや想いをお伝えします。


皆さん、こんにちは!

株式会社 TCC Japan 代表取締役の山本 高之です。


初回・2回目と時系列に基づいてお話ししてきましたが、今回は一旦 TCC の引退競走馬支援についてお話しさせていただきます。

すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、少し複雑で分かりにくいというお声をいただくこともありますので、なるべく分かりやすく特徴をお伝えしたいと思います。



「TCC 引退競走馬ファンクラブ」は 2016年4月に活動を開始し、今年で丸 9年を迎え、節目の 10年目に突入しました。

現在は全国 約 2,800名の会員さま、35か所の提携施設さまと共に、50頭を超える引退競走馬たちを支援しています。




「イベントにて、TCC 引退競走馬ファンクラブ 会員の皆さまと」





「馬を救い、人を癒す。」をテーマに掲げ、馬を救い、活かし、支える活動を行っています。その中でも TCC ならではの特徴を、3つピックアップしてご紹介します。


1.ホースシェルター®


2019年5月「TCCセラピーパーク」(滋賀県栗東市)の竣工と共に開始した、TCC の活動を象徴する日本初の取り組みです。

2016年から数年間にわたって支援活動を進めてきた中で、怪我などを理由に競馬を引退した馬がセカンドキャリアへ進むためには療養する期間が必要で、その期間がなかなか担保されていないことが一番のボトルネックになっていると考えていました。

そこで行き場のない競馬引退直後の競走馬を受け入れ、セカンドキャリアへ向かうための必要な療養期間を提供する ホースシェルター® を 4馬房 常設し、受け入れを開始しました。


「TCC セラピーパーク(滋賀県栗東市)のホースシェルター®」
「TCC セラピーパーク(滋賀県栗東市)のホースシェルター®」

それから丸 6年が経ちましたが、常に馬房はいっぱいで空きが出るとすぐに埋まり、待機する馬もいる状態が続いていますが、それが必要とされているなによりの証拠だと思います。

また受け入れる馬については取捨選択をせず、基本的に馬房が空いていて自立して生きていくのに問題のない馬であれば、順番に受け入れています。

怪我の程度が重い馬も多く、また競馬引退直後の馬ということで取り扱いも難しいため対応できるスタッフが限られたり、預託料をもらって預かるのではなく無償譲渡という形で受け入れるため、治療費などを含めた繋養にかかる費用を捻出する企業努力が必要となりますが、社会に必要とされている活動を何とか今後も続けていきたいです。



「療養が順調に進み、リトレーニングを開始した馬たち」
「療養が順調に進み、リトレーニングを開始した馬たち」

周囲に獣医師や装蹄師といった専門家が多くいる「馬のまち 栗東」ならではの取り組みとしても、非常に意義のある活動になっていると考えています。

※ホースシェルター® は TCC Japan の登録商標です。

※ホースシェルター® に在厩している馬たちの繋養に関する費用は、シェルターサポーターさまの会費からまかなっています。



2.終生飼養


前述の通り、ホースシェルター® で競馬引退直後の馬たちを無償譲渡という形で受け入れていますが、療養期間が終わった後もどこかに売却したり譲渡するわけではなく、馬生を全うするまで所有権を持ったまま支援する形をとっています。


支援の形や考え方は様々ですが、所有権を失えば当然その後の処遇については意見をすることも出来ず、行方が分からなくなったり望まない結果になる可能性もあります。

私たちはそのようなことにならないよう、競馬引退直後から馬生を全うするまでの終生飼養にこだわって支援活動を行っています。



「高齢になって働けなくなった馬たちが戻ってこれる場所でもある、メタセコイアと馬の森(滋賀県高島市)」


所有する形をとっているため、実際に支援できる頭数は経済的にどうしても限りがありますが、たとえ一頭でもその馬の未来は確実に変わります。

そして、所有して支援するだけでなくその馬たちの活躍の場を広げていくことで、馬に関わる人を増やしたい、裾野を広げたいという目的があります。


ホースシェルター® で療養期間が終了した馬をどんどん売却・譲渡していくというのも一つの考えだと思いますし、その方が多くの馬をセカンドキャリアに繋げられる可能性が高いと思いますが、私たちはこれからも終生飼養を前提とした活動を行い、TCC だけで支援できる頭数には限りがあっても、全国 様々な場所で支援活動が広がるきっかけになればと考えています。



3.預託連携


現在、自社施設は「TCC セラピーパーク」(滋賀県栗東市)、「メタセコイアと馬の森」(滋賀県高島市)の 2か所ありますが、その他にも全国各地の乗馬クラブや牧場、大学馬術部など約 34か所の様々なジャンルの施設に馬を預託し、その馬にあったセカンドキャリアを生み出しています。

全国大会で優勝するほどの競技馬や初心者向けのレッスンに活躍する練習馬、観光やふれあいなどで人を癒やすセラピー馬、余生をゆっくり過ごす養老馬など、これだけの多様なセカンドキャリアを生み出し、また全国各地に馬を預託しているのも TCC ならではの特徴だと思います。


「会員さまとのふれあいの様子」
「会員さまとのふれあいの様子」

預託施設にとっては預託料収入や TCC会員の来場による利用料収入、また CSR や PR としてのメリットがあり、TCC にとっては自社施設だけでなく全国各地の空いている馬房を活用させていただき、会員へのサービス提供につなげることで、お互いに価値のある取り組みとなっています。

もちろん言葉で説明するのは簡単ですが、乗馬業界にとって初めての取り組みや初めての預託契約の内容でしたので、立ち上げ当初は理解や共感を得ることに苦労することもありました。

現在はありがたいことに「もう 1頭預かりたい」というお声をいただいたり、ご紹介でお声がけいただくことも多くなり、様々な角度から支援の輪が広がっていることを実感しています。




「全国で暮らす TCCホースたちに会いに行くイベントも」


今回は TCC の引退競走馬支援の大きな特徴 3つについてお話ししましたが、他にも TCC ならではの取り組みでご紹介したいことがまだまだありますので、また別の機会にお伝えしたいと思います。

次回もお楽しみに。


Profile

山本 高之(やまもとたかゆき)

株式会社TCC Japan 代表取締役


1980年、滋賀県栗東市生まれ。

大学卒業後、コンサルタント会社での勤務を経て、2006年に東京でITベンチャーを起業。

東日本大震災を機に地域の重要性を感じ、出身地である「馬のまち 栗東」で馬に関わる事業を起こすことを決意。

2015年9月、地域の障がいをもった子どもたちのためのホースセラピー施設「PONY KIDS」を開所。

2019年5月、引退競走馬をセカンドキャリアにつなげ、馬と人の福祉活動を行う拠点「TCC セラピーパーク」、2023年には東京表参道に「BafunYasai TCC CAFE」をオープン。

2025年4月には、滋賀県高島市のメタセコイア並木沿いにTCC初の観光養老牧場 「メタセコイアと馬の森」をグランドオープンし、 引退競走馬を事業で生かす様々な取り組みを展開している。






文:山本 高之(株式会社 TCC Japan 代表取締役)

編集:椎葉 権成・近藤 将太

著作:Creem Pan


Comments


bottom of page