引退競走馬を取り巻く課題との出会い🐎💭
- Loveuma.
- 8 時間前
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引退馬支援の事業家として業界を牽引する、株式会社 TCC Japan・代表取締役の山本 高之氏が、
「馬のミライ」をつくるための、考えや想いをお伝えします。
皆さん、こんにちは!
株式会社 TCC Japan 代表取締役の山本 高之です。
前回は TCC の引退競走馬支援の活動についてご紹介しましたが、今回は第2回の続きをお話しします。
東京から栗東に戻り、ホースセラピーの事業準備、そして角居 勝彦 元JRA調教師と出会ってからのお話です。
2014年、角居氏の取り組みをお手伝いすることになり、まず最初に全国各地のホースセラピーに取り組んでいる団体を視察し、現状の課題や私たちにできることを調査することから始まりました。
※当時はホースセラピーという言葉は普及しておらず、障がい者乗馬や治療的乗馬、乗馬療育、乗馬療法など、団体によって様々な言葉が使われていました。
私が非常に幸運だったと思うのは、何せ当時の競馬界のリーディングトレーナーです。
角居氏のお名前のおかげでたくさんの方とお会いでき、情報交換や実際の活動を見学させていただくことができました。
そしてもちろん、自分自身のホースセラピー事業の立ち上げにも大いに役立ちました。

全国各地を視察する中で、強く耳に残った言葉がありました。
それは、「馬が足りない」。
もちろんホースセラピーに適した馬や、そのクラブが求めている馬が足りないという話だと思いますが、強烈に印象に残ったことを覚えています。
また、欲しい馬が手に入るルートがないというお話もありました。
片や地元の栗東に目を向けると、競馬を引退していく馬はたくさんいるのに、一方では馬が足りないと求めている人がいる。
ホースセラピーや乗馬団体の活動を視察している中で、馬業界全体の様々な問題や課題が見えてきました。
競馬を引退していく馬の流通、乗用馬に転用するトレーニング技術や施設、引退競走馬を支援する仕組み、資金、引退後のファンとの関わりなど、馬とのまちづくりをテーマに掲げて栗東に戻ってきた私にとっても、取り組まなければならない課題が盛りだくさんでした。
当時は、引退競走馬に目を向けることはまだまだタブーな領域。
引退後は追いかけてはいけないという、暗黙のルールがあるような時代でした。
しかし、競馬業界のまさに真っ只中にいる角居氏が矢面に立ってこの問題に立ち向かっていただけるのなら、この機会を逃してはならないという想いで、引退競走馬支援プロジェクトの立ち上げに向かっていくこととなりました。
「さらに数年後の写真ですが、競馬場でのイベントにて」
ちなみに先述の通り、当時ホースセラピーという言葉はあまり使われておらず、その言葉に対する批判的意見もたくさんありました。
それでも私は自分の事業において、あえてホースセラピーという少し抽象的な言葉を使用することにしました。
そこには、自分の中で 2つの意味がありました。
馬を介した人へのセラピー活動と、馬自身へのセラピー活動です。
つまり人と馬、両方の福祉活動を行う決意を込めて、ホースセラピーという言葉を使用しました。
これが、TCC Japan の活動の原点のような気がします。
「人と馬の福祉施設として活動している、TCC セラピーパーク(滋賀県栗東市)」
さて次回は、引退競走馬支援「サンクスホースプロジェクト」の立ち上げについてお話しします。
次回もお楽しみに。
Profile
山本 高之(やまもとたかゆき)
株式会社TCC Japan 代表取締役
1980年、滋賀県栗東市生まれ。
大学卒業後、コンサルタント会社での勤務を経て、2006年に東京でITベンチャーを起業。
東日本大震災を機に地域の重要性を感じ、出身地である「馬のまち 栗東」で馬に関わる事業を起こすことを決意。
2015年9月、地域の障がいをもった子どもたちのためのホースセラピー施設「PONY KIDS」を開所。
2019年5月、引退競走馬をセカンドキャリアにつなげ、馬と人の福祉活動を行う拠点「TCC セラピーパーク」、2023年には東京表参道に「BafunYasai TCC CAFE」をオープン。
2025年4月には、滋賀県高島市のメタセコイア並木沿いにTCC初の観光養老牧場 「メタセコイアと馬の森」をグランドオープンし、 引退競走馬を事業で生かす様々な取り組みを展開している。
文:山本 高之(株式会社 TCC Japan 代表取締役)
編集:椎葉 権成・近藤 将太
著作:Creem Pan
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