'17 アンタレスS王者の今!ロンドンタウンも破ったディープスカイ産駒は、甘えん坊の功労馬に! vol.37
かつて観衆を沸かせた名馬の"今"を紹介!
走り終えた今も、観衆を魅了したあの日の輝きは、決して色褪せない。
全国で暮らす、名馬の個性と"今"を集める『ウチの子はあの名馬!個性にLOVE❤︎ 引退馬コレクション』をお届けします!
今回のコレクションは、2017年のアンタレスS(G3)などを制した、モルトベーネ!
現在は、高知県土佐清水市にある、「認定NPO 法人あしずりダディー牧場 命の会」で暮らしているとのこと。
そのお世話をしている宮崎さんにマル秘情報をたくさん聞いちゃいました!
宮崎 栄美さん
(認定NPO法人 あしずりダディー牧場 命の会 理事長)
ウマ歴:16年
出身地:高知県
趣味:馬のお世話
休日の過ごし方:無休なので馬と過ごす
モルトベーネ
ニックネーム|ベーネ
生年月日|2012年3月24日
生産者|櫛桁牧場
馬主|三宅正義→二風谷ファーム
戦績|69戦18勝(2着6回,3着7回)
獲得賞金|1億7,346万円(中央)、1,883万円(地方)
主な勝鞍|2017年 アンタレスS(G3)
父|ディープスカイ
母|ノーブルエターナル
母父|アフリート
ここにきた日|2021年11月
名馬・ディープスカイの子として
モルトベーネの父は、NHKマイルC(G1)や日本ダービー(G1)を優勝した名馬・ディープスカイ。
その2年目の産駒として2014年7月にデビューしたモルトベーネは、3歳夏までに2勝を挙げると、翌年は条件戦を2連勝。
休養を挟んで降格後に挑んだ花のみちS(1600万下、現・3勝クラス)も難なく勝利し、オープン入りを果たします。
なお、モルトベーネがデビューからの2年間で5勝を挙げる間に、同世代のディープスカイ産駒であるタマノブリュネットがレディースプレリュード(G2)を、一つ下の世代のサウンドスカイが兵庫ジュニアGP(G2)、全日本2歳優駿(G1)を、キョウエイギアがジャパンダートダービー(G1)をそれぞれ優勝しており、モルトベーネにもダート重賞での活躍に期待が掛かっていました。
後にコリアカップ(G1)連覇のロンドンタウンを撃破
2017年1月、東海S(G2)に12番人気で出走したモルトベーネは、好位追走から直線で内を突いて脚を伸ばし、逃げたショウナンアポロンを捉えて先頭に立ちますが、レパードS(G3)優勝馬のグレンツェントが外から猛追し、ゴール直前で交わされ惜しくも2着に。
その後、次走のアルデバランS(OP)を優勝、名古屋大賞典(G3)4着を経て、4月のアンタレスS(G3)に3番人気で出走。
ここで1番人気に推されたのが、東海S(G2)で敗れた宿敵のグレンツェントでした。
レースは、中団を追走したモルトベーネが直線で鋭い末脚を発揮すると、馬群を割って抜け出し、2着馬ロンドンタウンに2馬身差を付けて念願の重賞初制覇。
宿敵・グレンツェントを下し、ここにリベンジを果たしました。
なお、モルトベーネの2着に敗れたロンドンタウンは、後にコリアカップ(G1)を連覇し、種牡馬となる馬でした。
地方移籍後も11勝を挙げる活躍
2019年7月より地方競馬に移籍したモルトベーネは、門別競馬への移籍初戦、ひまわりの里北竜特別で、後に星雲賞(H3・G)を勝利するクラキングスを破って移籍後初勝利。
その後も、北海道の田中淳司厩舎、高知の打越勇児厩舎を渡り歩き、道営で2勝、高知競馬で9勝を挙げる活躍を見せ、2021年10月の高知競馬でのレースを最後に、地方競馬から登録を抹消されました。
現在暮らす認定NPO法人 あしずりダディー牧場 命の会へは、モルトベーネの父・ディープスカイも所有している、認定NPO法人 引退馬協会からの紹介があり、引退した翌月には牧場へやって来たそうです。
全体的に「☆1」が、とても多いですね。
クールでシンチョウなモルトベーネですが、一体どのような、お馬さんなのでしょうか?
担当している宮崎さんに、モルトベーネの"印象的なエピソード"を聞いてみました!
「牧場に来てすぐの頃は、とても狂暴な馬でした。
馬房の窓を開けたり、中に入ってボロを拾おうとしたりすると、噛み付いたり、蹴ってきたりで、手入れの時も大変でした。
ですが今では、とても穏やかになりました。
放牧地でも他の馬と仲良くして、群れになって走っています。」
なるほど…牧場にやって来た頃は、「人懐っこさ☆1」そのものだったようです。
新しい環境に慣れない部分もあったのかもしれません。
ですが、エピソードをお聞きすると、今は「人懐っこさ☆4」くらいまでに、性格もガラッと変わっているのではないかと想像しました。
牧場に来てから3年近くが経ち、モルトベーネも宮崎さんのことを信頼してくれるようになったのかもしれませんね。
放牧中のモルトベーネ
群れで放牧中のモルトベーネ(左)
モルトベーネと仲良しのシルクネクサス(右)
噛みつき防止の口輪をされたミニョン
モルトベーネが苦手とする、ポニーのミニョン。
放牧地で噛まれたことがあるそうです。
牧場に来た頃は狂暴だったモルトベーネも、今では別の馬に変わったかのように、可愛らしく愛嬌のある子になりました。
認定NPO法人 あしずりダディー牧場 命の会では、モルトベーネの里親制度を行っており、支援会員様を募集中です。
馬主さんのいないモルトベーネの余生を、一人でも多くの方に支えていただけると幸いです。
宮崎さん、モルトベーネのマル秘情報をたっぷりご提供いただき、ありがとうございました!
なお、モルトベーネの見学は営業時間内であれば可能です。
柵の外からの見学は無料で、厩舎内の見学・えさやり体験(写真付き)は、お一人様1,000円で行っておられるほか、曳き馬・乗馬体験も受け付けておられます。
詳しくはホームページをご覧ください。
そして、認定NPO法人 あしずりダディー牧場 命の会さんのSNSからも、モルトベーネの姿をチェックできるので、ぜひフォローしてみてください♫
X(旧:Twitter)|@npo_daddyranch
Facebook|Npo法人 あしずりダディー牧場 命の会
協力:認定NPO法人 あしずりダディー牧場 命の会
取材・文:片川 晴喜
デザイン・編集:椎葉 権成
制作:Creem Pan
著作:Creem Pan・GJ
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モルトベーネは重賞競走で、ミルコ・デムーロ騎手でも秋山真一郎元騎手でも好成績を残しているんですね。
競馬ファンならご存知のとおり、このお二人は(意識的かどうかはともかく)アメリカン・スタイルで乗るジョッキー。基本的に背中がピシッとまっすぐで体がブレないことを心がけ、上半身にも下半身にも派手なアクションがない代わりに、腕(特に肘から先)だけが細やかにしなやかに素早く動いているように見える乗り方です。
特に秋山元騎手は背中にスチール板が入ってるんじゃないかと思うほど。
へっぴり腰にならず、前バランスで顎を引いて、直線でもコーナーでも馬の重心に自分の重心を素早く合わせるのがとてもじょうずだと感心します。腕に十分な長さがあるので窮屈に見えないのもいい(近年の若手では坂井瑠星騎手などがそうですね)。
2011年の小倉大賞典(6番人気サンライズベガで優勝)や、12番人気(!)だったモルトベーネを非常に惜しい2着に導いた2017年東海テレビ杯東海ステークスのときも、ミルコの言う「風を切るような乗り方」がカッコよかったです。
そしてもちろん、風を切らせてあげたモルトベーネも、すごくすごくカッコよかったのです❣️🤩
「趣味は馬のお世話」とおっしゃる宮崎さんと出会い、ついに「本気で甘えてもいい人」を見つけたモルトベーネ。
強いミニョンを前にまだ少し緊張を隠せない様子ですが(🐴「ワッパ(口輪)つけても危ねえヤツなんで....」)それもまたカワイイ一面と言えなくもない☺️💦
タフな現役時代に一区切りつけて「ふつうのお馬」に戻った幸せを、思う存分噛みしめてくださいね🫶❤️