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唯一無二への挑戦から生まれる、新たな引退馬支援|TCC Japan 山本高之 2/2




馬を活かした"ビジネス"

写真:株式会社TCC Japan 代表取締役 山本高之さん(Creem Pan 提供)


山本さんはTCCを通じて、これまで多くの引退馬に関連する事業を展開してきた。

ホースセラピーを取り入れた放課後デイサービス「PONY KIDS」や、滋賀県栗東市にある「TCCセラピーパーク」、「TCC 引退競走馬ファンクラブ」などはその一部である。これまで、教育・福祉・観光・養老など様々な分野から引退馬にアプローチ。TCCセラピーパークは、グッドデザイン賞やキッズデザイン賞を受賞するなど、社会的にも高い評価を受けてきた。


写真:TCC Therapy Parkでの活動写真(TCC Japan 提供)


"クラウドファンディング参加型"引退競走馬支援 啓発プロジェクト「馬のみらいアクション」も、そのひとつ。2022年1月にクラウドファンディングを開始すると、1ヶ月間で1,582人から11,952,000円もの資金を集めた。これは実に、目標の119%にのぼる金額である。「馬のみらいアクション」では、①活動原資を集める(クラウドファンディング)②今を伝える(コンテンツ制作)③人に伝える(啓発発動)という3つの工程で活動。ブックレットやドキュメンタリー映像の作成・配布を通じて、多くの人々に、引退馬の"今"を伝えた。


写真:(左から)馬のみらいアクション クラウドファンディングページ・ 活動写真①②(TCC Japan 提供)・ブックレット(Creem Pan 提供)


「これまでの取り組み自体がソーシャルビジネスであって、お金儲けが一番ではありません。今後、仮に簡単にお金儲けができるようなビジネスと出会ったとしても、それが馬の社会的価値に繋がらなければ『やる』という選択肢は出てきませんね」


山本さんは、自らの役目について「社会性はもちろんのこと、馬自らが自身の飼養代を稼ぐことができるような経済性をいかに創出していくか」を担うものだと考えている。社会性と経済性の二つが結びついて根付くことができれば、やがて文化的価値が生まれていく──その過程そのものにも、大きな価値を感じている。



次なる挑戦「メタセコイアプロジェクト」


TCCと山本さんが次に注視しているのは、メタセコイアプロジェクトである。

Loveumagazine.『「引退馬を事業で生かす」TCC Japan代表取締役・山本高之 3/3』でも取り上げているように、滋賀県高島市には、日本紅葉の名所100選にも選定された見事なメタセコイア並木がある。年間20〜30万人の観光客が訪れる有名な観光スポットであるその場所で、山本さんは引退馬支援のPRとして、その並木の横に馬車を走らせようと計画している。馬車を走らせるだけでなく、そこにカフェを併設すれば、ゆったりと過ごしてもらえる。若い旅行者たちの写真スポットでもあるメタセコイア並木から引退馬の問題点を啓発していければ…との想いから、ふれあい・乗馬・馬車・写真撮影などを通じてより多くの人に馬と触れ合える場所をつくり上げようとしている。


写真:メタセコイアプロジェクト 施設イメージ(TCC Japan 提供)


「メタセコイアプロジェクトは、オープンこそまだ先にはなりますが、9月に厩舎が着工予定、12月を目処に竣工するスケジュールです。馬車馬や引き馬用のサラブレッド、子ども用のポニー、怪我をして乗馬として働けないような馬たちを入厩させられたらと思っています。観光と養老の牧場というイメージですね。セラピーパークの構想も2019年5月の竣工までに3年くらいかかりました。早めに事業計画に乗ってくれたとはいえ、オープンしてから2年くらい経って私が東京に出てきたという形なので、メタセコイアの方も軌道に乗るのに少なくとも2年くらい掛かるかなと思っています。そこをどうにか早く軌道に乗せながら、次のことを考えていければと思います」


馬とは関係なく既に存在する人気観光地『メタセコイア並木』と、『引退馬』『馬車』という要素を組み合わせる。そこでまた、新たなる唯一無二の価値が誕生する。メタセコイアプロジェクトからも、山本さんの事業"らしさ"が感じられる。



"唯一無二"への執着


「新しいものを作る際は細部までこだわらないと作り切れないと思っているので、仕事に対して妥協は一切しません。細かいところ一つ取っても明確な理由を持っていないと、そこにストーリーは出来上がりません。ですから『何となく』とか『みんなもこうしてるから』といったことは、新しいものを作る際に考えないようにしています。それぞれの事業に対して、コンセプトはもちろんのこと、ストーリーがあるんです。そういうところができていないと厚みが出てこないし、唯一無二のものになり得ないと思います」


たしかに、山本さんが創出してきた事業はそれぞれストーリーがある。「幼い頃から"唯一無二のものを作っていきたい"という気持ちを抱いてきました」と語る山本さんだからこそ、その厚みの大切さを深く理解しているのだろう。


「唯一無二という信念があるからこそ、TCCの事業展開として乗馬クラブを作ることはしていないんです。乗馬が引退馬たちのセカンドキャリアとして大きな働きを担っていることについて異論はありませんが、すでにたくさんあるモデルに新規参入するよりも、セラピーパークのような馬に乗らなくても人が集まってくるような環境作りにチャレンジしていくことの方が、馬たちのこれからにとって非常に重要な意味を持ってくるのではないでしょうか」


山本さんがストーリーを大切にしながら作り上げてきた、様々な唯一無二の事業たち。逆に言えば、山本さんの『唯一無二への執着』の賜物でもあるだろう。その結果として、今回は表参道という場所に「BafunYasai TCC CAFE」が誕生し、近い未来にはメタセコイア並木の横を馬車が走るのだ。こうした『唯一無二への執着』から生まれる挑戦の数々が、引退馬の新たな可能性を生み出し続ける。



 
 

 

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取材協力:

山本 高之

株式会社TCC Japan


文:秀間 翔哉

デザイン:椎葉 権成

協力:緒方 きしん

取材・監修:平林 健一

著作:Creem Pan


 


監修者プロフィール:平林健一
(Loveuma.運営責任者 / 株式会社Creem Pan 代表取締役)

1987年、青森県生まれ、千葉県育ち、渋谷区在住。幼少期から大の競馬好きとして育った。自主制作映像がきっかけで映像の道に進み、多摩美術大学に進学。卒業後は株式会社 Enjin に映像ディレクターとして就職し、テレビ番組などを多く手掛ける。2017年に社内サークルとしてCreem Panを発足。その活動の一環として、映画「今日もどこかで馬は生まれる」 を企画・監督し、2020年に同作が門真国際映画祭2020で優秀賞と大阪府知事賞を受賞した。2021年に Creem Pan を法人化し、Loveuma. の開発・運営をスタートする。JRA-VANやnetkeiba、テレビ東京の競馬特別番組、馬主協会のPR広告など、 多様な競馬関連のコンテンツ制作を生業にしつつメディア制作を通じた引退馬支援をライフワークにしている。


 

 

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1 commentaire


HisMajesty Graustark
HisMajesty Graustark
28 juin 2023

馬車。カフェ。ふれあい。写真撮影。

もうどっかにあるものばかりだよな 🚬😎( ☜ なんとイヤミな書き出し)


そんな不埒なことを思ったヤツは山本さんを知らない。

一見普通のものに、あっと驚く魅惑のエレメントを加えて唯一無二のTCCテイストを創り出す彼の魔法を知らない。

たとえば、

(1)馬車のドライバーはJRAの現役騎手と元有名騎手が日替わりで務める。

(2)カフェのサラダやサンドイッチには完熟馬ふん堆肥でおいしく育てた🥒や🍅を使う。

(3)ふれあいと写真撮影に鼻を添えてくれるのは2020年のそふとダービー馬メイショウナルト号だ。 

   (↑ この中で正しくないものはどれでしょう?)


メタセコイアプロジェクトの施設パースを見れば、すでに唯一無二らしきものを建てる、いや生やす、予定であることがわかる。

育ちすぎたキノコかツリーハウスを思わせる望楼。夏場は螺旋階段が作る日陰で馬たちがまったりと涼む(のかもしれない)。


近所にグランピング・スポットがあるようなので、宿泊者はそこから馬に会いに通うこともできるだろう。

会いに来なければこちらから出かけて行く。ポニーがカートでブルーベリーアイスを売りにきたら人間は絶対に買う。カフェでつくった彩り野菜のランチボックスを、キャンプ場までコロコロとお届けしてもいい。(参考情報:富士吉田のシェットランドポニーのベートーヴェンくんは、お弁当を運ぶ〈ウーマーイーツ〉のサービスを提供しています)


真冬のメタセコイア並木も夢のように美しいという。

TCCホースの中で一番寒さに強い子が、雪の日に赤革の馬具と鈴をつけて軽い橇を引いてくれないかな?


実際には、もっともっと素敵なサプライズを用意しておられることでしょう。

プロジェクトのオープンを楽しみにしています。☺️

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