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ノーザンレイクに突然の襲来!敵は◯◯!!


 

北海道新冠町にある、引退馬の牧場ノーザンレイク。

そこで毎日を過ごしているライター・佐々木祥恵が、

馬ときどき猫な日々を綴ります。

 


 アブの季節がやって来た。


 これから約2か月、この虫との闘いとなる。


 馬や牛たちを狙う吸血アブは、日本シロフアブなど何種類かいる。


 皮膚を噛み切って血を吸うので、馬や牛たちもたまったものではない。数が少ないうちは口や脚、尻尾で追い払ってしのいでいるが、数が多くなってくるとそれも追いつかなくなる。そうなると早く帰りたいと出入口付近に集まってきて、必死に追い払おうと小走りになったり、寝転んだり、半ばパニックのような感じになるので、放牧地の様子を観察してそうなる前になるべく集牧するようにしている。(間に合わないことも多々ある)

1番多く飛来する日本シロフアブ


 メイショウドトウやタイキシャトルは高齢なので、女子チームよりもさらに早く馬房に戻して、アブや暑さの影響を最小限にとどめるように気を配っている。(この時期は高齢組も女子チームも放牧地に放す時間も午前4時から5時の間と早くなる)


 この地にやってきた一昨年は、キリシマノホシと芦毛ちゃんの2頭でこの時期を過ごした。アブは黒っぽい色に集まりやすいので、芦毛ちゃんよりキリシマの方に多く集まってきていた。はじめは食べ放題の青草に夢中だったキリシマも、お腹の下に鈴なりに止まって血を吸うアブに日を追うごとに耐えきれなくなり半狂乱気味になるので、午前8時頃には集牧するようにした。

口でアブを追い払うメイショウドトウ


 そんな折、ある牧場のSNSでアブ捕獲機(アブキャップ)を設置し、たくさんアブが捕れているという投稿を目にした。


 調べてみると元々は牛用で、 パドックでアブを気にするあまり食欲減退するのを軽減するというメリットもあるようだ。実際に捕獲機を置いた牧場では首や尾を振ったり、脚を挙げてアブを追い払うことが減少し、牛の群れ全体が落ち着いた様子になったという声もあるとのこと。


 これを設置できればアブの数が減って、キリシマたちのストレスも少しは解消されるかもしれない。だが他にも何かと入り用だったため、来年は絶対に購入するという目標を立て、馬たちには我慢をしてもらうことにした。

設置途中のアブキャプに興味津々のキリシマノホシ(左)と芦毛ちゃん


アブキャップの存在にすぐに慣れた馬たち


 1年後の昨年、悲願だったアブキャップを3台セットでやっと購入。女子チーム、シャトル、ドトウの各放牧地付近に置いた。だがこれだけでは広い放牧地をカバー仕切れない。そう思っていたところへ、ありがたいことにご寄付(一般社団法人馬と歴史と未来の会様から)いただいた1台と追加購入した1台が加わり、アブ対策が強化された。


 捕獲機の仕組みは以下の通りだ。


 温度の高いものに近づくアブの習性を利用し、熱を帯びた黒いビニールのボールにアブをおびき寄せる。血を吸おうとしてボールの上を歩き回りながら、アブは次第に上に上がっていき、上部にある筒状の捕獲容器に入る。その中に入ると逃げられない作りになっており、気の毒だがアブはそこで短い一生を終えることになるというわけだ。

熱を帯びたボールに早速集まってきたアブ


 よく効果を聞かれるのだが、捕獲機があってもアブは馬たちにたかる。ただ捕獲容器にたくさんのアブが入っているのも事実。捕獲機がなければそのアブたちが馬に向かっていたと考えると、効果はあるのかもしれない。


 また産卵に必要な栄養を得るために馬や牛の血を吸うメスアブを捕獲することにより、生まれてくるアブが年々少なくなる効果も期待できるそうだ。(実験した牧場では年々アブの数が減っている)


 実験した牧場とは環境の違いもあるだろうし、同じような効果が出るかは不明だが、少しずつでも減少してくれればと思っている。



 放牧地のアブが耐えきれない数になると、馬たちは出入口に寄ってきて厩舎に戻りたいアピールを始めるのだが、たいてい1番最初に出入口にやって来るのがタッチノネガイだ。

どんな時もいの一番に出入口付近で迎えを待つタッチノネガイ


 これはアブがいる時に限ったわけではない。1年中どんな時にも、最初に出入口付近にやって来ては待っているし、アブの時期となればなおさら早く帰りたいとこちらを見ている。繁殖として長年過ごした牧場ではほぼ毎日20時間の放牧をこなしていたと聞いていたのになぜ?と疑問なのだが、ノーザンレイクではともかく、いの一番に帰りたがる。


 ところが集牧時間に迎えに行くと、群れのナンバー2の芦毛ちゃんやボスのキリシマノホシに追い立てられ、せっかく陣取った出入口付近から逃げる羽目になる。20時間放牧の前の牧場ではボスだったというタッチノネガイ。キリシマや芦毛ちゃんに蹴散らされるたびに、こんなはずではなかったと思っているのでは?と想像している。



小うるさいハエを吸い取るハエ取り粘着シート


 アブ以外にも、ハエや蚊もうるさくなる季節。ハエには、ハエ取り用の粘着シートを壁やコーンに貼り付けて使用。蚊には動物用の電気蚊取り機を置いて対策をしている。


 どれも虫をすべて防げるわけではないが、調べたり、教わったり、試したりしながら、より快適に馬たちが過ごせるよう、日々模索を続けている。

(つづく)


 

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協力:ノーザンレイク・認定NPO法人 引退馬協会

文:佐々木 祥恵

編集:平林 健一

著作:Creem Pan

 


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