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踏みつけ魔・タイキシャトルを手入れする【牧場の一日】

ノーザンレイクの一日 その3

 

北海道新冠町にある、引退馬の牧場ノーザンレイク。

そこで毎日を過ごしているライター・佐々木祥恵が、

馬ときどき猫な日々を綴ります。

 


 14時半頃、まず各馬房に水桶をかけ、メイショウドトウとタイキシャトルから馬房に戻す。ドトウは扉付近でウトウトしたり青草が豊富な今時期は草を食んでいる時間が長くなった。それでも放牧が飽きるのか、川越が迎えに行くとバタバタと走ってくることも。厩舎までの道のりでも、立ち上がりそうな感じでバタついたりしている。(これは朝、放牧地に向かう時もやる)


 シャトルはドトウ以上にその日によって反応が違う。私が扉に近づくとすぐゆっくり歩いて来ることもあれば、呼んでも草を食べ続けている時もある。扉から少し離れた場所で草を食べている時はたいてい呼んでもしばらく無視し続ける。そして突然走り出して勢い良く扉付近まで来る。


 かと思えば、つい数日前は扉近くの柵沿いを走りながら何往復もしていた。無口もスンナリかけさせる時と、朝の放牧前と同様になかなかかけさせない時とがある。ハートバミも同じく頭を上げてかなりの確率で妨害されるが、最終的には何とかかけさせてくれる。扉を開けて放牧地から出る時も要注意。3回に1回は唸るような勢いで飛び出す。私も最初は怖かったが、今では飛び出してきても何とか対処できるようになった。


迎えに行くとこの日のシャトルは案外穏やか。でも明日もそうだとは限らない。


 2頭の御大を馬房に戻すと今度は女子チーム。最初にキリシマノホシ(筆者)&タッチノネガイ(川越)、次に芦毛ちゃん(川越)とタッチデュール(筆者)を馬房まで引いていく。女子チームも一筋縄ではいかない場合もあるが、それについては機会を改めて紹介するつもりだ。


 その後は馬の手入れ。川越がタイキシャトル、タッチデュール、キリシマノホシ、私がメイショウドトウ、タッチノネガイ、芦毛ちゃんを担当している。私が担当する3頭は、どちらかというと手入れ中も大人しい馬。しかし雨降り後の土の上に寝転んで砂浴びをされると、汚れを落とすのが大変だ。


芦毛ちゃんの汚れを懸命に落とす筆者


 それに比べて川越担当の3頭は気性がきつかったりうるさい面のある馬だ。特にシャトルは、お手入れ中に前脚を伸ばしてわざと人の足を踏もうとするから、それを避けながらの手入れとなる。馬の手入れもなかなか奥が深いので、改めて別の機会に詳しく紹介したいと思う。

前脚を伸ばして人の足を踏もうとする、踏みつけ魔・タイキシャトル


 そして皆、16時半頃、待ちに待った夕飼い。エン麦の入っていない配合飼料を中心に与えている。

エン麦が入っていない配合飼料

配合飼料に亜麻仁粉末、整腸剤、塩などを添加し、水を注いでかき混ぜたら出来上がり


 飼い葉の催促が1番うるさいのは、タッチデュール。低い声でかなりうるさく鳴く。シャトルはかすれた声で催促。飼い葉が配られるまでの間、この2頭の声が響き渡る。


 皆だいたいは夢中で食べているが、芦毛ちゃんとタッチノネガイの2頭は飼い葉に集中せず、他の馬が食べ終わっても残っていることがある。芦毛ちゃんは隣の牧場の馬がよく見える位置にいると、そちらが気になって仕方ないらしく、少し食べては外を見ている。タッチノネガイは、発情が来るとなぜか芦毛ちゃんが気になるようで、飼い葉を食べては移動して芦毛ちゃんの姿を目で追っているという具合だ。


腹ペコのシャトル&デュールの飼い葉くれくれ二重奏


 6頭が飼い葉を食べている最中に、水が少なくなっている水桶に水を足す。飼い葉の後は、乾草(チモシー&ルーサン)か採草地で刈ってきた青草を与えている。川越は雨が降っていなければ18時半頃まで草刈りに励む。


 草刈りを終えると人間はお風呂に入り、テレビを観ながら夕食を摂る。少しのんびりしたのも束の間、9時半前後には夜飼いだ。再び厩舎に行き、配合中心の飼い葉を与え、各馬房の馬糞(ボロ)を川越が拾い、筆者が水桶に水を足したり、飼い葉桶を洗う。この時間帯にも乾草(チモシー&ルーさん)を与える。その最中にキリシマノホシが顔をのぞかせ、早く人参、リンゴを頂戴と催促。飼い葉桶を洗い終わると、いよいよ皆楽しみなおやつタイムの始まりだ。食べやすい大きさにカットした人参、リンゴを配ると、皆美味しそうな音を立てて食べてはまた催促する。


 糖分の摂り過ぎにならないよう、だいたい1頭につき人参1、2本、りんごは1~2個を6頭で分けている。


みんな楽しみ!夜飼い後のおやつタイム


一心不乱に夕飼いを食べるドトウとシャトル


 おやつタイムが終わると、馬栓棒がちゃんとしているかなどを確認して、消灯。「みんな、おやすみー。明日もよろしくね」と挨拶して厩舎をあとにする頃には、時計は22時半を回っていることも多々。最後に川越が外回りを確認して、長い1日が終わる。


馬栓棒や扇風機当たり具合の確認をして終了!

(つづく)


 

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協力:ノーザンレイク・認定NPO法人 引退馬協会

文:佐々木 祥恵

編集:平林 健一・片川 晴喜

著作:Creem Pan

 


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1 Comment


HisMajesty Graustark
HisMajesty Graustark
Jul 08, 2022

御大は完全に確信犯の顔。「イタズラするぞ」という決意に満ちて踏んでいる。きっと、以前にうっかり(?)人間の足を踏んだ時の成功体験が忘れられないのでしょうね。踏まれた厩務員さんがブラシを放り出して逃亡し、お手入れが早く終わって味をしめたとか.....川越さん、何があってもブラシを放さないでください。おいたのじいじを勝たせてはなりません!

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