川越代表の元担当馬・ゼンノエルシドの訃報😢初G1勝利を成し遂げた相棒との当時を振り返る...🏇
北海道新冠町にある、引退馬の牧場ノーザンレイク。
そこで毎日を過ごしているライター・佐々木祥恵が、
馬ときどき猫な日々を綴ります。
ノーザンレイク代表の川越がJRA厩務員時代に担当していたゼンノエルシドが、9月1日に新冠町の村上欽哉牧場で息を引き取った。27歳だった。
村上欽哉牧場で余生を過ごしていたゼンノエルシド
(2020年6月30日撮影:特別に会わせていただきました)
ゼンノエルシドといえば新馬戦でパドックから馬っけを出し、レースでもそのままの状態で走って快勝したのが語り草になっている。訃報を知った後にXを覗くと、やはりそのことに触れるポストが多数あった。競馬ファンにとってあのデビュー戦は、相当インパクトが大きかったということだろう。
馬っけを出したまま走る姿からはかなりの荒くれ者をイメージするが、川越は「大人しい馬だった」と話す。確かにデビュー前はトレセンでも馬っけを出したりしていて、少しヤンチャな面はあったが、レースを1度経験した後は大人しく扱いやすい馬に変化していた。
エルシドは「繊細さ」も持ち合わせていた。どのような時にそれを感じたのかを質問してみたが、エルシドに日々接している者にしかわからない感覚なのか、言葉にはうまく現せないようだった。だがエルシドの成績が安定しなかったのは、その繊細さも影響していたと川越は考えている。
アイルランド生まれのエルシドの海外での評価は高く、期待も大きかった。それだけにエルシドの安定しない成績は川越にとってプレッシャーにもなっていたが、4歳(現3歳)夏の札幌で1000万クラス(現2勝クラス)の摩周湖特別、重賞の京成杯AHと連勝し、ようやく持てる能力を発揮できるようになったと希望を抱いた。だがGIスプリンターズSで10着と大敗する。
「ベストの距離ではなかったけれど、格好はつけてくれると思っていた」(川越)
落胆は大きかったが、そこからマイルチャンピオンシップに向けて陣営は立て直しをはかり、見事GIのタイトルを手にしたのだった。
「スプリンターズSからマイルチャンピオンシップまでが長かった。本当に長く感じた。勝てて正直ホッとした」
川越のこの言葉からは、プレッシャーの大きさとレースに向けていかに気を遣ってきたのかが伝わってきた。
2001年のマイルチャンピオンシップで頂点を極めたエルシドだが、その後精彩を欠き、2002年のマイルチャンピオンシップ14着を最後に現役を退いた。
引退後は種牡馬になり、一時は青森に繋養されていた。厩務員を退職し趣味の釣りの旅の途中、川越は青森でエルシドに会っている。川越がエルシドと触れ合っていると「普段はうるさくてそんなことはさせない」と牧場の人が驚いていたという。エルシドは川越を覚えていたようだった。
次にエルシドに会ったのは、2020年6月30日。現在私たちが暮らすこの牧場の賃貸契約のため、新冠町に訪れた時だった。その時エルシドは種牡馬を引退して、同じ新冠町の村上欽哉牧場で余生を過ごしており、特別に会わせていただいた。川越が柵のそばに行くと、草を食んでいたエルシドもすぐに近づいて来た。
優しい表情でエルシドを見る川越
そして首を伸ばしてしばし川越と触れ合っていた。その様子を動画に収めながら、やはりエルシドは覚えていると確信した。エルシドに会ったのは、それが最後だった。
エルシドは川越を忘れていない、そう感じる動画
「マイルチャンピオンシップは、僕にとっても初めてのGI勝利だった。香港にも一緒に行ったし、エルシドにはたくさんの経験をさせてもらった。感謝している」
そう呟いた川越の目が潤んでいるように見えた。
川越が担当した重賞勝ち馬は、皆、天国に旅立ってしまった。ともに闘ってきたかつての相棒がこの世を去る。その喪失感は私には想像できない。ゼンノロブロイが亡くなった時もそうだったが、訃報に接しても「そうか」と一言残して仕事に戻った。
かつての相棒の訃報に接しても淡々と目の前の仕事に向き合う
今の自分の仕事は、目の前にいる引退した馬たちの世話だ。淡々と寝藁を返し、黙々と馬の手入れをこなしながら、悲しみや寂しさを川越なりに昇華している。その姿からそう感じたのだった。
ありがとう、エルシド。また会う日まで
亡くなった馬たちへの想いを胸に目の前の馬たちに向き合っていく
(上からメイショウドトウ:認定NPO 法人引退馬協会預託馬、ネコパンチ、女子チーム:タッチノネガイ、キリシマノホシ、アシゲチャン)
猫たちにも精一杯の愛情を込めて(上:メト 下:チビ、福豆)
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協力:ノーザンレイク
認定NPO法人 引退馬協会
文:佐々木 祥恵
編集:片川 晴喜
著作:Creem Pan
ゼンノエルシド号はG1ショータイムさんの動画で拝見しました。
撮影は2年前、偶然にもエルシドのお誕生日(3月26日)だったとか。
青鹿毛が栃栗毛みたいになっていたけど、たぶん芦毛の子と同じく年齢を重ねてメラニンが減っていったんだね。たてがみが金髪まじりのダークブロンドで、漆黒の姿とはまた違う魅力がありました😍
川越さんはアイルランドに縁があるのかな?
フライフィッシングが趣味で馬の扱いが巧みというだけでもうコネマラ地方の地主様みたいなんだけど、その川越さんに丹精こめてお世話をされたエルシド、そしてノーザンレイクではタイキシャトルもまた、アイルランドの風を知っていたんですよね。(🐴ド「ワタシも🇮🇪」)
天国で出会ったエルシドとシャトルは、今ごろ雲の牧場でまったりしているでしょうか?
懐かしい川越さんの思い出話のほかにも、マイルG1の勝ち方とか藤澤厩舎のカイバで何が一番うまかったとか、話は尽きないでしょうね😌🙏🏻