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前髪パッツン女子・タッチデュール


 

北海道新冠町にある、引退馬の牧場ノーザンレイク。

そこで毎日を過ごしているライター・佐々木祥恵が、

馬ときどき猫な日々を綴ります。

 


 6月後半、暑さを感じる日も数日あり、前回もお伝えした通りアブも出始めた。


 今年は昨年以上に厳しい夏になるかもしれないと身構え、できる範囲での暑さ対策を始めた。

女子放牧地の水桶をチェックする?メト


 4頭からなる女子チームの放牧地の水桶の数は春、秋、冬は2つだが、気温の上昇とともに水を飲む量も増えるので1つ追加して3つにする。昨年夏も3つだったが、桶と桶の間隔が狭かったため、タッチノネガイ&タッチデュール母娘が、ボスのキリシマノホシと2番手の芦毛ちゃんに遠慮して水桶に近寄れないでいたり、タッチ母娘が先に水を飲んでいる時には、キリシマや芦毛ちゃんが後からやって来て「あっち行け」とばかりに追い払っていたこともあった。


 皆がなるべく平和に水が飲めるよう、桶の1つを少し離した位置に下げることにした。水は3つとも確かに減ってはいるのだが、位置を替えた水桶を誰が使っているかを確認できていないので、効果があったかは残念ながらはっきりとはわからない。

間隔を十分に取った3つの水桶


 暑くなると登場するのが扇風機だ。厩舎では家庭用だと風力が弱いため、工業扇風機を1頭に1台ずつ置いている。

扇風機の風が心地良さそうな馬たち(手前からタッチノネガイ、タイキシャトル、メイショウドトウ)


 扇風機が大好きなのが、タイキシャトル。見るたび、扇風機の風を顔に当てて涼んでいる。放牧から馬房に戻ると、扇風機を早く置けとばかりに、いつも風に当たっている位置に顔を出して催促する。



扇風機の前で気持ち良さそうなタイキシャトル


 朝晩少し肌寒い日もあるので、天気予報で時間ごとの気温や風向きなどをチェックし、扇風機をつけるかどうかや、風力の強弱などを決めている。夜飼い時には、川越が各馬の馬房に入って風の当たり具合や馬房の中の体感温度を確認して、扇風機の位置や強弱を調整している。馬たちに心地良く夜を過ごしてもらおうと、扇風機チェックにはかなり時間を費やしている。


 「それでもまだ十分ではない、馬たちには本当に我慢ばかりしてもらっている」。


 川越がいつも言っている言葉だ。去年より今年、今年より来年と、馬たちが夏を快適に過ごせる環境を少しでも整えていくため、これからも試行錯誤が続くことだろう。

放牧から戻ってくるとすぐに扇風機を設置


 毎日やること満載であっという間に時間が過ぎる。気がつけばタッチデュールがノーザンレイクに仲間入りして1年がたっていた。オーナーさんのたっての希望で、パッツン前髪にカットする。これが似合うとSNSでもなかなかの評判だ。

昨年7月1日にやって来たパッツン前髪のタッチデュール


 群れの順位は最下位ではあるが、この1年で随分うまく放牧地内で立ち回れるようになったと感じる。キリシマや芦毛ちゃんの近くで草を食べていると、この2頭に蹴散らされることが多々あるのだが、誰にも邪魔されたくない時にはスタスタと皆から離れた位置に行き、1頭モクモクと草を食んでいる。マイペースなデュール。これからも彼女らしく毎日を過ごしてほしい。


 今後も折に触れて、馬たちの素顔や様子を紹介していくので、楽しみにしていただければと思う。

誰にも邪魔されずモクモクと草を食むタッチデュール



(つづく)


 

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協力:ノーザンレイク・認定NPO法人 引退馬協会

文:佐々木 祥恵

編集:平林 健一

著作:Creem Pan

 


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