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メイショウドトウの凛とした姿を撮影🐴📸その裏で実は色々な配慮があるんです…🤫


 

北海道新冠町にある、引退馬の牧場ノーザンレイク。

そこで毎日を過ごしているライター・佐々木祥恵が、

馬ときどき猫な日々を綴ります。

 


「馬は高貴な生き物、その誇りを守りたい」

以前このダイアリーで、当牧場代表・川越の馬を扱う上での心構えを記したことがある。これは人間側の馬への勝手な考えなのかもしれない。だがそのような気持ちで馬に接することが大切なのではないかと思っている。


さて先週、Twitterで見学者が投稿する種牡馬の写真についてある方(メトの写真集の撮影をしてくれている方でもあります)がtweetし、タイムラインがざわついていた。その方が馬産地を訪れ、牧場やスタリオン関係者と話した際に出た意見ということだった。そのtweetを目にした時に、当然賛否両論に分かれるだろうなと想像はできたが、正にその通りになった。






種牡馬の写真についてのTweet


見学者を受け入れ、写真や動画の撮影を許可している牧場の場合、どんなものが撮れてしまっても仕方ない部分がある。それを投稿するかしないかは、撮影者の判断に委ねるしかない。だができれば投稿してほしくなかったという写真や動画があるのも想像できる。これは種牡馬だろうが、引退した馬たちだろうが根底にあるものは同じではないかと思う。


これまた人間の勝手な考えなのかもしれないが、馬にも尊厳があると思っている。昨年某スタリオンを取材した際に、たまたまある種牡馬が目の前で尿をした。その時に案内してくれたスタッフが「これは撮らないであげてくださいね」とすかさず言った。今回のTwitterの件で真っ先に頭に浮かんだのは、この時の光景だった。種牡馬のブランドイメージを守るというより、馬に対する敬意から発せられた言葉のように感じ、馬の尊厳を守るとはこういうことなのだと改めて勉強させられた。


今回のTweetの件でどんな写真を投稿すれば良いのかを悩んでしまった方もいるかもしれない。そのような方には、このスタリオンスタッフの言動がヒントになるのではないだろうか。馬なのだから、どんなシーンを撮られようが何とも思っていないという意見もあるだろう。確かにそうかもしれないが、人が馬に対してどういう気持ちを持って撮影するかによって、写真の出来上がりも違ってくるような気がしている。


馬着なしのドットさんことメイショウドトウ

毛ヅヤよし!敬意を持って撮影したつもりだが、まだまだかな?


先ほど「できれば投稿してほしくなかったというケースがあるのも想像できる」と書いたが、これはノーザンレイクでも時々ある。これは馬だけではなく、施設面の画像や動画でも言えることだ。この牧場は私たちが借りる前は、約5年間空いていた。そのせいもあってかなり老朽化した部分や、不要なものが投棄されているD型倉庫や小屋がある。見学に来られてしまえばバレることなのだが、なるべくならそういう箇所は投稿してほしくないというのが本音だ。修理修繕し、不要な倉庫や小屋など撤去したいのはやまやまだが、ざっと見積もってもらうとかなりの額になり、こうなると本当に必要なものからお金や労力を使うしかなく、正直放置状態だ。私自身もSNSに投稿する際には、かなり神経を遣う。以下の動画はメトが馬房の扉をよじ登って扉の上で落ち着くシーン。これをSNSに投稿するつもりだったが、上の窓の状態があまりにも酷かったので取りやめた。事実を隠すつもりはないのだが、SNSに投稿した画像や動画だけを見て、この牧場の環境は悪い、手をかけてないと思われてしまう可能性があるからだ。


メトがよじ登った上に見える応急処置の窓(今回は恥をしのんで出しました)


馬の画像や動画をアップするのは、施設以上に気を遣っている。5頭のうち3頭はオーナー様から預かっているので、特に気を遣う。アップして失敗したという経験がたまにあるのだが、投稿する前に必ず画像や動画をチェックし、角度によって馬が痩せて見えたり、歩いていて躓いたりしたシーンがあると投稿しないようにしている。(痩せたのではないか、躓いたけどどこか悪いのではないかなど無用な心配を避けるため)。撮影中、芦毛ちゃんの本名由来の愛称を川越が呼んだ声が入ったら、音声を消すか動画自体を消すことにしている。キリシマノホシと芦毛ちゃんにはサク癖があるのだが、悪癖と言われるものはなるべく映らないように気をつけている。(たまに映っているが)タッチデュールが左右に揺れる癖も熊癖(ゆうへき)と言われる悪癖の1つなので、投稿の仕方を考える必要がありそうだ。馬たちの悪癖はノーザンレイクに来る以前からあるものだが、SNSを目にした人にこちらの管理が悪いと受け取られかねないからだ。


サク癖をするキリシマノホシがチラッと映り込んでいる


いつだったかドットさんが歩いて厩舎に戻るシーンを撮影した方がいて、それに対して「歩様に違和感を感じる、大丈夫なのか」という内容のコメントがついたことがあった。川越は競馬の最前線で仕事をしていた人間だ。ましてやGIレースに臨む馬を数多く世話をしてきた。少しの異常が結果を左右する厳しい世界にいたので、いわば異常や故障をいち早く見つけるプロと言ってもいい。勝負の世界から身を引いた馬であろうと脚元は常にチェックしているし、歩様の違和感はすぐに感じ取る。その川越がこれまでドットさんの歩様に異常を唱えたことはないし、現に異常はなかった。だが撮影角度なのかわからないが、歩様に違和感云々のコメントがついたことは、もし広まれば馬の管理ができていない牧場として認知されてしまう可能性もある。それ以来、動画や画像をノーザンレイク以外の人にアップされることが少し怖くなったのも事実だ。


放牧前にドットさんの脚元チェック(もちろん放牧後も)


この話と少し矛盾しているかもしれないが、これまで何度か放牧地から馬房に戻るドットさんのシーンを私は投稿している。歩様など良からぬコメントがつくリスクはあるのだが、これには理由がある。ドットさんは可愛いというのが定番となっているが、元競走馬、種牡馬としての凛とした姿もあるのだと皆さんに見てほしくて、川越が引くドットさんを撮影している。私が引くよりも何百倍もドットさんは格好良く歩いているはずだ。このように馬は、扱う人によって見え方が変化する。馬の扱い方のうまい下手に関わらず、まずは馬に敬意を持って品位や尊厳を傷つけない、そういう気持ちを持つことが第一歩で、そこから馬との良好な関係性が作られていくと私は思う。川越は何十年にも渡って馬との関係を築いてきた。それが引き馬にも表れていると確信している。これは写真や動画撮影にも通ずるのではないだろうか。うまい下手はさておいて、馬に敬意を払い、品位や尊厳を傷つけない。この気持ちがあれば、良い作品が生まれる。そんな気がしている。


川越とともに放牧地から厩舎に戻って来るドットさん


他の牧場やスタリオンについて新参者の引退馬牧場が言及するのは僭越過ぎるので、主にノーザンレイクを例にして思うことを書き連ねてみた。自分の中でまだ整理されていないので、種牡馬やその他の馬たちのどのような写真や動画がNGなのか明記はできないが、今回書いたことが少しでもヒントになれば幸いだ。


追伸 

以前私はドットさんの検温シーンを投稿したことがある。馬の体温の図り方を知らせたかったというのがアップした理由だが、体温計の入った肛門を撮影しているわけなので、馬の尊厳どうこうと人様のことは言えた義理ではない。反省。 


(つづく)

 

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協力:ノーザンレイク・認定NPO法人 引退馬協会

文:佐々木 祥恵

編集:片川 晴喜

著作:Creem Pan

 


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