心身にトラブルを抱えた馬も、"馬らしく"生きられる場所づくり by Horse Space 紡さん
「withuma.」vol.80 Horse Space 紡さん

Profile
お名前:Horse Space 紡さん
居住地:埼玉県
第80回は、「心身にトラブルを抱えた馬も、"馬らしく"生きられる場所づくり」を手がけておられる、Horse Space 紡さんです。
いったいどのような「withuma.」を送っていらっしゃるのでしょうか?
Horse Space 紡さんの「withuma.」
HorseSpace紡は乗馬クラブではなく、「馬のための場所」として、「ご縁のあった馬は最期まで」をモットーに、馬たちが得意なことを活かして個性を発揮しながら“いきいき”と最期の瞬間まで幸せに過ごせる場所を目指しています。

写真:ケア会員さんのケア活動(本人提供)
また、心身のケアが必要な馬たちと向き合う時間を大切に、ホースケア会員制度というものを導入。
「心身のケアを丁寧に行うことで、セカンドステージ・サードステージで長く健康に活躍できることが、馬たちの命を繋ぐことだ」という信念で活動しています。

写真:騎乗レッスン後、乗られた方とケア会員さんで、お手入れ&ケアをする様子(本人提供)
この活動を始めたきっかけは、以前、私が所属していた乗馬クラブで、「乗用馬として使えない」と判断されてクラブから出されてしまい、廃用の危機にあったミントを引き取ったことでした。
当時の彼女は蹄の病気を患っていて、精神状態も不安定で、人を蹴ったり噛んだりしてしまう馬でした。
ところが廃用の危機にあったミントを引き取り、時間をかけて心身のケアを丁寧に行った結果、蹄の病気も克服し、本来の可愛らしさを取り戻し、今はとても穏やかに暮らしており、お客様にも可愛がっていただいています。
ミントの変化を目の当たりにし、「ミントが生きているうちに、心身のトラブルを抱えた馬たちをケアする場所を作りたい」と思うようになり、2018年4月にHorseSpace紡を設立しました。

写真:「アオちゃん」とグラウンドワークをして遊ぶボランティアさん(本人提供)
活動において大切にしていることは何点かあります。
・馬は私達と同じ生き物であり、お互いに尊敬し合う関係性であること。
・馬の個性を尊重すること。
・それぞれの馬が得意なことを活かして活躍できる道を、人が常に創意工夫すること。
・馬たちのQOLを高いレベルで維持する努力を怠らないこと。
・馬が馬らしく居られる環境を提供すること。
・そして人は学び続けること。
今後の目標ですが、 HorseSpace紡は3月に移転を控えています。
移転先では馬房数も増えるので、心身のケアが必要な馬たち、そういう馬たちをなんとかしてあげたいと思っているより多くの方々に頼っていただける場所づくりを目指しています。
また、馬に乗る方だけでなく、「馬には乗らないけれど馬が好きで、馬のためにできることを探している」という方々にも楽しんでいただける場所づくりをすることで、人を乗せられなくなった馬であっても活躍していける場所であることを目指しています。

写真:本人提供
現在、移転に伴いクラウドファンディングに挑戦中です。
目指すべき、馬のための場所づくりのプロジェクトですので、多くの方々へ届くことを願いながら頑張っています。
ホースケア会員制度について詳しく拝見すると、馬たちが健やかに過ごせるように心身のケアをする事が活動のメインとなっていますが、他は特に決まりがなく、会員が考える“馬のため”を実現して、各々で馬の幸せに寄与するといった制度のようです。
例えば私だと、生産牧場での研修経験を活かして、裏掘りやブラッシング、馬房掃除などで協力する事が可能ですね。
馬は自身が得意なことで活躍し、人は自分ができることで馬を支える、とてもステキな仕組みだと感じました。
HorseSpace紡さんのクラウドファンディングは、3月29日(金)まで行っておられるそうですので、理念や活動内容に共感された方は、是非クラファンページもチェックしてみてください! https://readyfor.jp/projects/hstsumugi202404
Horse Space 紡さんの「Loveuma.」

写真:ミントが怖いことを克服中(本人提供)
ミントは引き取った当初、人に触られるのが怖いので噛んでくる馬でした。
ところが、こちらが彼女の気持ちを尊重して理解を示し、行動で示してあげると、そのうち「噛む」という最終手段に出なくてもコミュニケーションが取れるようになりました。
馬は私たち人間が思っている以上に、人間の動作を観察しているし、私達が頭の中で考えていることを察知している動物だということが良くわかります。
また、ミントは、とても臆病で繊細な馬です。
だけど、「そういう馬だ」と決めつけて彼女の可能性を奪ってしまうことは避けたかったので、一緒に色々なことに挑戦してきました。
そして受け入れることが困難だった様々なことが、遊びながら楽しく、ゲーム感覚で受け入れられるようになったこともありました。
「馬は鏡」と言いますが、馬と向き合う時は“ごまかし”が効きません。
そこが馬の最大の魅力だと感じています。

写真:ロバのぬいぐるみを愛しているミントしゃん(本人提供)
お気に入りの馬ですが、前出のミントキャンディ(通称:ミントしゃん)です。
ミントがいたから、馬のために生きる人生を歩むことになりました。
ミントがいたから、たくさんの方々とのご縁が紡がれました。
そしてミントがいたから、HorseSpace紡が誕生しました。
私の人生を大きく変え、より多くの馬の元へ導いてくれたミントは、私にとってソウルメイトのような馬です。
“そういう馬”だと決めつけずに、1つずつ時間をかけて付き合い、寄り添われたことで、ミントも心を開いてくれたのですね。
「“ごまかし”が効かない」、おっしゃる通りだと思います。
騎乗している時に別のことを考えていると、馬も立ち止まって草を食べてしまう事がありました。
ただ乗っているだけなのに、こちらが集中を欠いたことが伝わっており、「なんて繊細な動物なんだ...」と感じました。

写真:ミントしゃんがソフト競馬に出た時の様子(本人提供)
お話にも出てきたミントシャンは、現在「ソフト競馬」でも活躍中!
withuma.では過去に、ソフト競馬代表の福元さんをご紹介していますので、ご興味のある方は是非チェックしてみてください。
引退馬問題について

写真:馬が馬らしくいられる時間(本人提供)
現在行っている引退馬支援ですが、HorseSpace紡では、「人を乗せることができなくなった馬でも活躍できる」というモデルケースになれるよう、ホースケア会員制度、馬の年金制度など、新しいことにチャレンジし続けています。
また、引退馬問題の解決については、競走を引退した直後の馬たちが、セカンドステージへキャリアチェンジするためのリトレーニングを受けますが、同時に今セカンドステージにいる馬たちが使い捨てにならないよう、心身のケアを受けられる機会を作ることと、活躍する道をつくること。
そして、その先のサードステージに繋がるチャンスを作ってあげること。
さらに、そういう馬たちが過ごすための受け皿を増やしていき、そこでもきちんと利益を生み出せる環境を作ることが大切だと考えます。
例えば乗馬クラブにしても馬房数には限りがありますから、引退競走馬がセカンドキャリアに進むことで、先にそこで暮らしていた馬の一部が、“ところてん方式”で出されてしまうこともあるかと思います。
そうすると馬が入れ替わっただけで、第二の引退馬が生まれてしまいますから、恐らくこれは引退馬問題の根本的な解決だとは言えないでしょう。
ですので、おっしゃる通り、ところてん方式で押し出された馬にも活躍できる道を創ってあげなければいけませんよね。
受け皿が増えることも大切だと思います。
ただ、養老牧場の方にお話を聞いていると、「なかなか営利に走れない」とおっしゃる方が多かったりもします。
きちんとお金が生み出されて、誰かが無理をすることなく、人も馬も幸せになる道を、皆で考えていきたいですね。
今回は、「心身にトラブルを抱えた馬も、"馬らしく"生きられる場所づくり」を手がけておられる、Horse Space 紡さんの「withuma.」を伺いました!
毎週定期更新してまいりますので、次回もよろしくお願いいたします!
「withuma.」では、馬にまつわる活動や、その思いについて発信していただける方を募集しております。
リモート取材は一切なく、専用フォームからアンケートにお答えいただくと、その内容が記事になります。
今後も「withuma.」を通して、引退馬問題前進の一助となれるよう、微力ながら馬事産業・文化に携わる人を発信していきますので、是非皆さまからのご応募をお待ちしております!
▼詳細は下記バナーをクリック!
協力:Horse Space 紡さん 取材・文:片川 晴喜 編集:椎葉 権成 著作:Creem Pan
長ければ30年を超える馬生の中で、「終のすみか」こそ馬にとって最も過ごしやすい環境でなければならないと常々考えています。
紡さんが「活動において大切にしていること」の一つ一つは、馬と人が結ぶ古くからの契約でもあります。馬に関わる人みんなの基本的な心得であってほしいですね。
>馬たちのQOLを高いレベルで維持する努力を怠らないこと
>馬が馬らしく居られる環境を提供すること
>そして人は学び続けること
「馬が馬らしく」とは、どういうことなのか? 常に初心にかえって問い直したいポイントです。
馬は本当は人を乗せることなんか好きじゃないと思うけれど、それでも人間に協力して、信じがたいほど困難なタスクにも一緒に取り組んでくれます。
だからこそ、馬がすべてのキャリアを務め終えた後、それまでの労苦が十分に報われて身も心もゆっくりと癒せるような最終ステージを、人が用意しなければウソだと思うのです。
(JRAさん、養老牧場にもっと支援を!🫵😠)
『うまの おいのり』という絵本がありますね。
ヨーロッパの厩舎に伝わる素朴な飼養訓に触発されてつくられた本です。
紡さんのご活動からは「馬のお祈りを全部叶えてあげたい」という熱い思いが伝わってきます。
クラウドファンディング、全力応援❣️☺️🫶